"白米だけの夕飯を出されたので、家を出ました" 第2話
「半だけ」のはずだった同居
話は、あの夜から約へ遡る。
公平の父が筋梗塞で急逝したのは、の終わりだった。歳だった。
葬儀が終わってほど経った夜、公平は夕の卓で、珍しく申し訳なさそうに両をわせた。
「母さん、半くらいうちで緒にませてもいい?」
義母の芳は郊の戸建てで、義父と暮らしをしていた。私たちのマンションからはとバスを乗り継いで以かかる。
「だと眠れないの?」
「夜になると父さんのこといして泣くらしいんだ。話でもずっとそんなじでさ」
公平は何度もを押した。
「半でいい。落ち着いたら、ちゃんとへ戻ってもらうから」
夫をくしたばかりのをにするのは、私にも配だった。
だから私は頷いた。
「半なら」
、芳は引っ越してきた。
驚いたのは、引っ越し業者のトラックからさな仏壇までりてきたことだった。半だけの滞にしてはげさにえたが、芳は何でもない顔で客の窓際へ仏壇を置いた。
「お父さんだけ置いてくるなんてできないでしょう」
そして私へ向き直り、殊勝な表でをげた。
「半だけ、お世話になるわね」
最初の週で、台所の主導権は芳へ移った。
私がの夜に作っておいた噌汁は、翌朝には捨てられている。
広告
代わりに芳の噌汁が公平の椀へ注がれた。
「公平の好きなは私が番ってるもの」
公平は照れたように笑っていた。
ある晩、仕事から帰った公平の着を私がハンガーへ掛けると、芳は満そうに言った。
「そうそう。麻子さんは公平の世話をするためにうちへ来てくれたんだものね」
私は瞬、を止めた。
「うち」。
公平名義の賃貸ではある。
けれど賃や活費の半は私も負担している。
それなのに芳のでは、息子のは自に自分ので、私はそこへ嫁入りした使用のような位置づけだった。
ただ、当の私は義父を失ったしみのせいだとおうとした。
しくらいならしよう。
半だけなのだから。
私は芳にもできる限り負担をかけないようにした。
平の昼、で事を作るのが面倒なもあるだろうとい、族用タブレットへアプリを登録した。支払いには私のクレジットカードを設定した。
「平のお昼だけ使ってください」
「悪いわね」
芳は嫌よく答えた。
「休みのに使った分は、届いたに私が現で払うから」
私は疑わなかった。
半は、あっというに過ぎた。
の初め。
夕、私はなるべく穏やかに切りした。
「お母さん、そろそろご自宅へ戻ることを考えていらっしゃいますか?」
芳は湯呑みを置き、げさにため息をついた。
広告
「今さら暮らしなんて無理よ」
「でも半って……」
「夜が怖いの。あんな広いでで眠れないわ」
私は公平を見た。
公平はテレビのリモコンを触りながら、度も私と目をわせなかった。
「母さんも落ち着かないんだよ。もうしでいいだろ」
「もうしって、どのくらい?」
「分かんないけどさ」
そして、いつもの言。
「母さんも悪気ないんだから」
この頃から、公平の癖になった。
何か問題が起きる。
私が相談する。
すると公平は、
「母さんも悪気ない」
「寄りなんだから」
「ちょっとしてよ」
そのつのどれかで話を終わらせた。
芳は「では夜が怖い」と言いながら、そのから駅のカラオケ教へ通い始めた。友達とランチへかけ、夕方遅く帰ることもある。
膝が痛いと言いながら、デパートでは階段を使う。
それでも自宅へ戻る話になると、
「じゃ無理」
と言う。
さな疑問はあった。
だが、まだ私は公平を信じていた。
いつかきちんと母親と話してくれる。
いつか私の側にってくれる。
そうっていた。
公平は毎計座へ万円を入れていた。
私は万円。
費はほぼ私。
芳は「だけじゃ細い」と言い、活費は円も入れなかった。
それでも私は、期限の切れた同居を受け入れ続けた。
約束がし延びているだけ。
いつか終わる。
そう考えていたからだ。
けれどになって分かった。
芳にとって「半」は、最初から帰る期限ではなかった。
私をへ慣らすための、ただの言葉だった。