"妻の予定表に書かれた「最終日」" 第5話
空のページ
紗季が眠ったあと、僕はアルバムを取りした。探偵に頼んだ点で線を越えているのに、また妻の私物をくのかと自分に問いかけた。それでも今度こそ確かめたいことがあった。表には、結婚したに紗季が貼ったさなラベルがある。「ふたりの」。僕は灯りを落とした居で、そのラベルを指先でなぞってからページをいた。
最初の数ページには結婚式、婚旅、初めて買ったソファで笑うが写っていた。やがて写真は、毎同じレストランの窓際の席へ変わった。最初の枚には僕と紗季がいる。枚目から、妻だけになっていた。枚目も枚目も、その次も。写真の裏に記された付はすべてだった。僕はページを戻し、まためた。写っているがになっても、テーブルには分の器が用されていた。
目は規事業のちげで帰宅が遅くなっただった。目は方張。目はたぶん忘れていた。僕の記憶には仕事の理由がそれぞれ残っているのに、紗季がその夜をどう過ごしたかは度も考えていなかった。写真の端に写る彼女は、最初の頃は笑っている。何か経つと、カメラに向かって元だけをげるようになり、の写真では窓のを見ていた。
最の写真を裏返すと、妻の字でくかれていた。
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「今も来なかった」。責める言葉ではなかった。だからこそ、そこに積みなったが見えた。僕はのを帳で調べた。そのは仕事をめに切りげ、同僚とみにっていた。紗季からのメッセージは「今は帰り遅い?」で、僕は「先に寝てて」と返している。何もいさなくて済むように、僕は自分で扉を閉めていたのだ。
アルバムの次のページは空だった。に撮るはずの今の写真を貼る所なのか、それとも最初から空のままにするつもりなのか。僕はアルバムを閉じ、元の棚へ戻した。ちがると、棚の脇に封筒がつ落ちているのに気づいた。引っかかったままになっていたらしい。拾って差を見ると、駅の反対側にある産会社の名が印刷されていた。
封筒のはいており、内側から枚のが半分ほど見えていた。覗いたのはほんの数だったが、そこには「賃貸借契約」「入居予定 」とかれていた。契約者欄にある名は、紗季だった。僕は封筒を元の所へ戻した。結婚記が最になるというのは、事の約束だけではないのかもしれない。妻は僕のらない部を、もう自分の名で借りていた。
僕はアルバムの背表をもう度見た。紗季は写真をごとに並べ、の名と付を丁寧にいていた。
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僕がらなかったのは、妻が何をしていたかだけではない。彼女が同じ約束を守るために毎予約を取り、を選び、まで歩いていたことだ。そこには僕が軽く扱ってきたが、ひとつずつ形になって残されていた。
僕は寝へ戻り、眠っている紗季の横顔を見た。彼女はので満をにすることがない。だから僕は、今の暮らしに納得しているのだとっていた。けれど、満を言わないにも決める力はある。僕がを貸さないがくなれば、相談をやめてで準備するようになるのは当然かもしれなかった。
机に向かい、僕はを枚取りした。言い訳ではなく、これまで自分が妻に聞いてこなかったことをきしてみた。仕事のこと、体調のこと、週末のこと、これからみたい所のこと。最初はつで終わるとったが、欄はすぐに埋まった。までかもない。紗季が本当にていくつもりなら、僕に残されたはっていたよりずっとかった。