"七年後、屋上で見つかった妻の秘密" 第13話
法な裁きはされた。
しかし、法廷をた順警部補の胸の奥には、消えることのない暗が垂れ込めていた。
州の桑原裕子失踪事件。
あの、歳で消えた女性の遺体は、依然としてたいの底のどこかに眠ったままだったのだ。
熊本刑務所の堅牢なコンクリート壁の奥。
シゲルは受刑者番号で呼ばれる々ので、の囚との接触を断ち、単独(独居)で静かに役していた。刑務官の記録によれば、規則正しい活を崩すことはなく、作業も私語を切交わさず、面会に訪れる者も最までもいなかったという。
20124。満期所まであとを切ったの、熊本刑務所から鹿児島県警へ本の連絡が入った。
「役の受刑者・佐藤シゲルが、かつての担当刑事である順警部との面会を希望しています」
すでに現をれ、警察署の副署となっていた順は、そのらせを聞いて数分、執務の窓のを見つめ続けた。
翌週、順は熊本刑務所の面会にいた。
いアクリル板の向こうに現れたシゲルは、すっかり腰が曲がり、髪は真っに抜け落ち、代半の老そのものの姿になっていた。
「……順さん。来てくれたか」
擦れ違ったような、乾いた声だった。
「何の用だ、シゲル。私に話すことなど残っているのか」
順が鋭い線を投げかけると、シゲルは自らの節くれだった指先を見つめながら、ぽつりぽつりと語り始めた。
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「ミキさんのことだ。……あのの朝、あのはで事務所にやってきた。『全部っています。役所の類も見ました。警察へきます』と言って、机のに帳を置いた」
シゲルの肩が、微かに震えた。
「震えていなかったよ。あんな若い女性が、男の私をにして、歩も引かずにまっすぐ私を見ていた。……あのい目が、刑務所の井を見げるたび、毎晩にてくるんだ」
「なぜ殺した。自首すれば、もの、嘘をねずに済んだはずだ」
シゲルの元に、自嘲のような歪んだ笑みが浮かんだ。
「度罪を犯したはな……度目の罪を犯すことなど、何のでもないんだよ。坂を転がり落ちると同じだ。止まろうとしても、止まれない」
順はを乗りし、アクリル板に顔をづけた。
「シゲル、桑原裕子さんはどこにいる。彼女をどこへ埋めたんだ。彼女の母親は、今も娘の帰りを待っているんだぞ」
シゲルは目を閉じ、く息を吸い込んだ。
沈黙。計の秒針の音だけが、狭い面会に響く。
やがて、シゲルが目をけた。その瞳には、かつての酷なはなく、ただ底れぬ虚無だけが漂っていた。
「……あの子は、何も悪いことはしていなかった。……悪かったのは、私だ」
「シゲル!」
「です」
刑務官の声が響き、面会終のブザーが鳴った。シゲルはちがり、順に度だけ浅くをげると、度と振り返ることなく奥の扉へと消えていった。
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自の体を成していない、ただの言の呟き。
それが、この男がこの世に残した最の言葉となった。
翌の2013、シゲルは刑期を満して所したが、故郷へ戻ることもなく、州へ現れることもなく、元引受もないまま、社会の吹き溜まりののへと姿を消した。
そして、裕子の母は、その翌の、娘の消息をることのないまま、暮らしの古い営宅で静かに息を引き取った。娘の失踪届を、ぬまで度も取りげることはなかった。
暦2023、晩。
州倉区の旧。昭の面を濃く残していた造や商が軒並みち退き、規模な区画理事業がめられていた。
その再発エリアの片隅に、築を超えて廃墟と化していた階建ての造アパート「若葉荘」があった。1985に桑原裕子が暮らし、忽然と姿を消した、まさにあの建物だった。
1114、型のが入り、若葉荘の解体作業が始まった。
ガラガラと激しい音をてて壁が崩れ、古びた瓦がダンプカーの荷台へと積み込まれていく。作業は順調にみ、目には建物の基礎部分、コンクリートのが剥きしになった。
午過ぎ。ショベルカーのアームが、建物のの隅——かつて共同の資材倉庫として使われていた部分のコンクリートを砕いた瞬だった。