"七年後、屋上で見つかった妻の秘密" 第10話
病のベッドので、郎は酸素マスクをつけ、点滴の針を刺された腕を震わせていた。歳の老躯は、恐怖のあまり極限まで縮こまっていた。
「吉永さん。体調が優れないところ申し訳ないが、聞かなければならないことがある」
順がベッド脇のパイプ子に腰掛け、警察帳を掲げた。
「州の若葉荘、そしてこのサングリーン。つの現であなたと佐藤シゲル——いや、佐藤タカシが何をしていたのか、全部把握しています。……あなたがシゲルの過をっていたからこそ、あの災の際、彼はあなたを背負って助けしたんじゃないですか? を塞ぐために」
郎の図モニターのアラームが、急激に鐘を打ち始めた。
「ち、違う……! 私は何もやってない……! あいつが……あいつが全部やったんだ……!」
酸素マスクを自らむしり取り、郎は掠れた声で叫んだ。
「1985の……倉のアパートで女の子が消えたの朝、タカシが私の飯にやってきたんだ……! 青ざめた顔で、作業着の袖にをつけて……『親方、頼みがある。何も見ていないことにしてくれ』と……! 私は怖くなって、何も聞かずに頷いた……!」
「なぜ警察に通報しなかった!」
啓太が語気をめて問い詰めた。郎は両で顔を覆い、しゃくりげた。
「通報すれば、私が現にタカシを紹介した責任を問われるとったんだ……! それに、あいつの目が……を殺したの目だった……! 逆らえば何をされるか分からない……! だから鹿児島へ逃げてきたんだ。
広告
なのに……なのに気がついたら、あいつがこのマンションの管理に座っていた……!」
「あいつが追ってきたのか?」
「そうだ……! 『親方、またよろしく頼みますよ』って、あのたい顔で笑ったんだ……! 自分の秘密をる私を、元に置いて監するために……! だから災の修理費の増しも、言われるがままに名を貸した……! 断れば何をされるか分からなかったんだ……!」
老の告は、にわたる恐怖の支配の記録だった。
そして、順が最も核となる問いを投げかけた。
「、ミキさんがあなたの部を訪ねてきましたね。彼女に何を話したんですか」
郎の呼吸が、瞬止まった。
「あの奥さんは……役所で古い図面を調べて、私の名を見つけてやってきた……。帳簿の正を追及されて、私はパニックになったんだ……。これ以嗅ぎ回られたら、全部バレてしまうと……。だから、言ってしまったんだ……『あの男の昔の名はタカシだ。州でも女が消えている。だから頼むから、もう関わらないでくれ』と……!」
「そのことを、シゲルに伝えたのか」
郎は答えなかった。ただ、蒼な顔をベッドのシーツに埋め、声にならない嗚咽を漏らした。
言ったのだ。怯え切った老は、保のためにそののうちに管理事務所へ駆け込み、若い主婦がすべてを嗅ぎ回っている事実を、悪魔に密告してしまったのだ。
広告
「すまない……すまない……! まさか、あの奥さんまで殺すなんてわなかったんだ……!」
病に響く老の懺悔の声を背に、順はちがった。
ピースは嵌まった。
歳の主婦がなぜ狙われたのか、そのは完全に証された。
残るはただつ。
あの鉄の蓋を溶接し、遺体をタンクの底へ投げ込んだという「かぬ物証拠」を掴むことだけだった。
捜査本部へ戻った順は、直ちに1993当のサングリーンの全記録の再捜査を命じた。
「焦点は19934だ! あの旧型貯槽のハッチは、1990に漏れで密閉されている。犯はミキさんを殺害した、ハッチの溶接を焼き切って遺体を投げ込み、再び溶接して密閉したはずだ。マンション内でその作業が能な材がした証拠を探せ!」
捜査員たちが管理事務所から押収した段ボール数箱分の納品伝票、作業報告、納伝票をシラミ潰しにめくっていった。
夜を徹した作業の末、午、の若い刑事が叫び声をげた。
「ありました! 警部補、これを見てください!」
差しされた伝票の束のに、19934の壁補修事に関する材リース伝票が挟まれていた。
『品名:アセチレンガスボンベ、酸素ボンベ、搬型ガス溶接・切断器式。リース期:199348〜428』
受領者のサイン欄には、黒いマジックで力くかれた跡があった。