"七年後、屋上で見つかった妻の秘密" 第6話
の方向へと傾斜していった。
保庁の巡艇隻が現域にし、ダイバーが磯周辺のメートルの底をくまなく捜索した。しかし、どれほど探しても、ミキの遺体どころか、につけていたはずのスニーカーの片方、トレンチコートのボタンつすら発見されなかった。
現の捜査指揮官は、集まった報陣に対して淡々と説した。
「この域は錦湾の湾に向かう潮流が非常にく、特に潮の引き潮には速数ノットに達します。温がいこの期、度沈んだ遺体はガスが発して浮するまでにをし、そのにへと流してしまうケースは決して珍しくありません」
遺があり、遺留品が現に残され、潮流のデータも致している。
婚活の悩みによる突発な発作自殺——警察の公式見解はそう結論づけられ、捜索活はわずかで打ち切られた。事件は「自殺の蓋然性が極めてい方事案」として、分いファイルのに閉じられた。
だが、当代の若刑事だった啓太だけは、どうしても拭いきれない違を抱えていた。
ミキのバッグが発見された磯へくには、マンション最寄りのバスから線バスに乗り、部のバスターミナルで別の系統に乗り換え、さらに分以揺られなければならない。
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全程でくかかる距だ。
自用を持たず、運転免許も持っていなかったミキが、そのルートを移した形跡がどこにもしなかったのだ。
啓太は管轄内のバス会社、タクシー会社、ターミナルの売に至るまで徹底な聞き込みをった。しかし、失踪当の朝、青いヨガバッグを持った若い女性を目撃した者は、ただのもしなかった。
「警部、おかしいです。彼女はどうやってこの磯まで移したんでしょうか。誰かのに乗せられたとしか考えられません」
啓太の申に対し、ベテランの係はややかに首を振った。
「啓太、余計な藪をつつくな。遺があってバッグがあるんだ。い詰めたがどうやってへ向かったかなんて、目撃者が見つからないことなどいくらでもある。これ以員を割く余裕はない」
捜査記録の最終に、啓太は唇を噛み締めながら、鉛でだけき残した。
『本の移経を裏付ける客観証言、皆無。第者の関与の能性を完全には排除できず』
その鉛の文字は、誰の目にも留まることなく、警察署の庫のへと沈んでいった。
方、サングリーンでは、いがマンションを包み込んでいた。
夫の健は歳の若さで妻を失い、魂が抜けたように痩せ衰えていった。
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自治会は典を集め、民たちは腫れ物に触るように健を見守った。
そして、管理のシゲルもまた、く沈痛な面持ちで健の部を訪れていた。
「旦さん……本当にお気の毒です。あんなにお優しくて、素らしい奥さんだったのに。私にできることがあれば、何でもおっしゃってください」
シゲルは両で健のを握りしめ、涙ぐみながら慰めの言葉をかけたという。その姿に、疑の目を向ける民は誰としてしなかった。
だが、この、誰も気づいていなかった。
辺に残されたあの遺。
そして、マンションのに鎮座する、分い鋼鉄の塊のに隠された「戦慄の真実」に——。
季節は巡り、カレンダーの数字だけが酷に更されていった。
1993のが過ぎ、が訪れ、やがて号は平成へと完全に定着していった。の流れとともに、サングリーンの民たちの記憶から「ミキ」という名はしずつ化していった。
夫の健は部を引き払うこともなく、まるでいつか妻が帰ってくるのを待つかのように、きりでその部にみ続けていた。数はさらに減り、朝く仕事にて夜遅く帰宅するだけの、霊のような々を繰り返していた。
そんな歳のにあっても、シゲルは何つ変わらない姿でマンションに君臨し続けていた。
毎朝の見回り、敷内の清掃、切れた球の交換、民からの苦への誠実な対応。