"七年後、屋上で見つかった妻の秘密" 第4話
という事費用のには、埋めようのない巨額の乖がしていた。
増し請求。そして、修繕積の正な横領。
シゲルと吉永郎のが結託し、架空の事費を計してマンションの資産を着していたのではないか。
だが、ミキの調査はそれだけでは終わらなかった。彼女の几帳面な性格は、さらに根本な疑問へと向かっていた。
シゲルという男は、体何者なのか。
役所の記録に残る管理会社の届類や、自治会の過の役員名簿を遡っても、シゲルの履歴には自然な空がすぎた。1986にこのマンションの管理に就任する以の経歴が、どこにも記載されていないのだ。職歴欄にはただ「建設関係業務に従事」とあるだけで、職の会社名も、以んでいた所もかれていなかった。
4の初め、ミキはある決を固めて、サングリーンの階へと向かった。
暗い共用廊の突き当たり、305号。吉永郎のむ部のにち、呼吸をしてインターホンを押した。
数分、い音とともにドアが数センチだけいた。チェーンがかかった隙から、臓病を患って青い顔をした老が顔を覗かせた。
「どなたですか……」
「突然申し訳ありません、自治会で会計のお伝いをしておりますと申します。吉永さん、の気の災修繕の件で、し類の確認をさせていただきたいのですが」
広告
ミキが丁寧にをげると、郎の表が変した。老の目が激しく揺れ、喉仏がした。
「わ、私は何もらん……! 事のことは全部、管理のシゲルさんに任せてあったんだ。私に聞かれても困る!」
「吉永さん、お待ちください! 私、責めに来たわけではないんです。ただ、施業者としての吉永務さんの控えが残っていないかと——」
「らんと言ったららん! もう度と来るな!」
バタン!
激しい音をててドアが閉ざされ、内側からガチャリと鍵が回る音が響いた。
拒絶。あまりにも過剰な反応だった。単なる類の備であれば、ここまで怯えたように取り乱すはずがない。
ミキは直したまま、たい鉄のドアを見つめていた。老の瞳の奥にあったもの——それはりではなく、底れない「恐怖」だった。
彼らは何を隠しているのか。シゲルという男は何者なのか。
ミキは自分の元が、像を絶する巨なの淵に差し掛かっていることを、肌でじ始めていた。
1993410、曜。
夜からり始めたは康状態を保っていたが、空は鉛のに覆われ、全体が暗い湿気に包まれていた。
午過ぎ、ミキは自宅のリビングで、黒いダイヤル式の話をに正座していた。受話器を握る指先が、微かに汗ばんでいる。彼女がダイヤルしたのは、福岡の実のくにむ代からの親友、彩(あや)の自宅だった。
広告
プルルル、プルルルと呼びし音が回鳴った、受話器の向こうから聞き慣れたるい声が響いた。
「はい、松本です」
「……彩? ミキよ」
「あ、ミキ! どうしたの、久しぶりじゃない! 鹿児島はどう? もう慣れた?」
親友の無邪気な声を聞いた瞬、ミキの張り詰めていた緊張の糸が、微かに緩みそうになった。
「うん、元気よ。健さんも優しくしてくれてるし……菜漬けもに漬けられるようになったわ」
最初の分は、のない世話だった。博の桜の状況や、共通の友の結婚話。だが、ミキの声のトーンが普段よりもく、折言葉を詰まらせることに、彩は次第に違を覚え始めた。
「ねえ、ミキ。何かあったの? 健さんと喧嘩でもした?」
受話器の向こうの沈黙。ミキはリビングの窓のを見つめながら、を決したように声を潜めた。
「彩、聞いて……変なことを言うかもしれないけど、笑わずに聞いてほしいの」
「え……何よ、改まって」
「私、うちのマンションのことで……とんでもないものを見つけちゃったかもしれないの」
「とんでもないもの?」
「うちの管理さん、すごく真面目で民からも信頼されてて、表彰までされてるなの。でもね、そのがこのマンションに来るにどこで何をしていたのか、誰もらないのよ。……それだけじゃない。役所の古い類を調べていたら、絶対に表にちゃいけないような記録がてきて」