"母に贈った家を狙う親戚夫婦" 第5話
「お母さんのせいじゃない」
「でも……」
母は涙を拭った。
そしてなことを言った。
「もう、部くらい使わせてあげてもいいんじゃないかしら」
私は母を見た。
「何を言ってるの?」
「浩司たちも商売がうまくいかなくて変なんでしょう。それに、親戚で警察汰になったりしたら……所にも何てわれるか」
やはりそこだった。
母はを失う怖さより、から「たい」と言われることを恐れている。
「私がすれば済むことでしょう?」
瞬だけ、が折れかけた。
私がどれだけ証拠を集めても、母自が「いい」と言えばがない。
それなら、部貸すくらい――。
そこまで考えただった。
の入退記録がをよぎった。
母が怪をする。
浩司はすでにへ入り始めている。
これは、困った親戚が偶然転がり込んだ話ではない。
母が入院するよりから準備していた。
「お母さん」
私は母を見た。
「やっぱり駄目」
「裕子……」
「これは部貸せば終わる話じゃない」
私は警備記録とメッセージを見せた。
「に浩司はへ入ってる。お母さんが旅でいないと分かっていたに」
母の顔が固まった。
「それからにをかせた。つまり、最初からむ準備を始めて、から理由を作った能性がある」
母は何も言えなかった。
「今ここで許したら、次はもっと求される」
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私は母のを握った。
「を守るために、私にしをちょうだい」
施設をた私は、すぐの専へ話した。
このを建てた、と建物の登記を依頼した弁護士だった。
事を説する。
すると話の向こうで彼が瞬黙った。
「森田さん」
「はい」
「実は今の午、こちらにも本、妙な問いわせがありました」
私はを止めた。
「誰からですか?」
「浩司さんと名乗る男性です」
胸が脈打つ。
「何を?」
弁護士の答えは、私が像していたよりはるかに悪かった。
「親族が所する産を、自分の名義へ変更するにはどうすればいいか、と」
浩司はもう「む」だけでは満していなかった。
そのものを奪う方法を探し始めていた。
午、私は法律事務所を訪れた。
担当弁護士は私が持参した資料を机へ並べた。
警備会社の入退ログ。
内の状況写真。
母とのメッセージ。
管理会社の申請記録。
浩司の持っていた。
「まず、これについてはしてください」
弁護士が母のメモを指した。
「この内容だけで宅の所権が移ることはありません」
「やはりそうですよね」
「それどころか」
弁護士はファイルから登記事項を確認できる類を取りした。
「浩司さんは、最も事なことを理解していないようです」
私の名が記載されている。
森田裕子。
「このと建物の所者は文さんではない」
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弁護士が言った。
「あなたです」
私は静かに頷いた。
を建てる、母にはんでもらうつもりだったが、所名義は最初から私にしていた。
理由は簡単だ。
父がくなって以来、母の周囲には々、の相談を持ち込む親戚がいた。
将来余計な揉め事が起きないよう、建設費をすべてした私の名義にしたのだ。
浩司はらない。
齢の母がんでいる。
だから母のだとい込んだ。
母にをかせれば自分のものにできると勘違いした。
「ただし」
弁護士の表が厳しくなった。
「しすぎないでください」
「何か?」
「名義変更ができないと気づいた、別のものを狙う能性があります」
「別のもの?」
「お母様の通帳、印鑑、現。あるいは類です」
血の気が引いた。
母は昔から、切なものを同じ所へ置く癖がある。
「すぐ回収してください」
「分かりました」
「それから正式な退求をしましょう。今はこちらを通してください」
法律事務所をたには夕方だった。
駅のホームで私はホームセキュリティのアプリをいた。
母が暮らしするため、リビングの部には見守りカメラがある。
画面をく。
そこで、が止まった。
浩司が仏壇のの引きしをつずつけていた。
里美はテレビ台の収納を漁っている。
類をへし、裏返し、を確認している。
何かを探している。
私はすぐ録画を保した。
弁護士が危惧した通りだった。
へ着いたのは午を過ぎていた。