"結婚翌朝、五分遅れの朝食が暴いた秘密" 第3話
砕け散った膳と笑の嵐
「ふざけるなッ! べさせられないだと!?」
広にぶちまけられたい噌汁の湯気ので、孝志が顔を潮させて鳴り散らした。 に散らばった陶器の破片を踏み砕きながら、彼は私の胸ぐらを掴みげようと迫ってくる。
「お、自分が何をしたか分かっているのか!? 創業百の『黒崎』ので、親族同が揃うハレのの朝を叩き壊したんだぞ! がおかしくなったのか!!」
義姉の由美も、着物の裾を両で押さえながら、ヒステリックに甲い声を張りげた。 「信じられない! 野蛮極まりない女ね! たかが分遅れたことを叱られたくらいで逆して、義父の御膳をひっくり返すなんて! こんな気狂い、即刻警察に突きすべきよ!」
義母の佳代は、わざとらしく胸元を押さえて過呼吸のような真似をしてみせた。 「ああ……恐ろしい……! 黒崎の格式を何だとっているの! お父様、ご覧になりましたか!? こんな女を専務の妻として迎え入れたなんて、族の恥晒しですわ!」
親族たちからも、非難と侮蔑の嵐が容赦なくり注ぐ。 「だから素性のれない般庭の娘など入れるべきではなかったんだ」「専務の顔にを塗りおって」「即刻、婚届を叩きつけて追いせ!」
号と罵声が渦巻く、私はただ静かに、元の畳を見つめていた。
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畳の藺に染み込んでいく、種類の異なる噌汁のシミ。 の親族のにび散った濃褐のシミと、義父の席のに広がった、淡く透き通るような噌のシミ。
「おい、聞いてるのか美咲!」 孝志が私の肩を力任せに揺さぶった。 「今すぐ全員に座して謝れ! に額を擦り付けて、『申し訳ありませんでした』と泣いて詫びろ! そうしなければ、今こので叩きしてやる!」
私はゆっくりと顔をげた。 腫れがった頬の奥で、鋭利な刃物のような線を孝志の瞳へと突き刺す。
「謝りません」
「……何だと?」
「私は、謝るべきことなど何つしていません。……座をして謝罪すべきなのは、私ではなく、そちらです」
広が、を打ったように静まり返った。 孝志のが半きになり、親族たちが息を呑む。 あまりの堂々たる態度に、佳代が引き攣った笑いを浮かべてを挟んだ。
「まあ! どこまで図太い女なのかしら! 自分の際で事を台無しにしておいて、私たちに謝れですって!? お父様の朝を奪った罪を何と得るの!」
「奪ったのではありません」 私は座の義父――正郎の顔を真っ直ぐに見据えた。 義父は青ざめた顔で、震えるに薬のい包みを握りしめたまま、微だにせず私を見つめていた。
「私は、お義父様の命を守ったのです」
私のその言が落ちた瞬、由美が嘲笑うようにを叩いた。
「命を守ったぁ? 何よその見え透いた嘘! 遅刻した言い訳に義父の病気を使うなんて、どこまで浅ましい女なの!」
親族たちの笑が再び広がりかけた、まさにそのだった。
バタバタバタッ!!
静寂を破り、い廊の向こうから、凄まじい勢いで板をる音がづいてきた。 荒い息遣いとともに、広の襖が激しくに引き倒された。