"二十六年目の告白" 第5話
を剥くと、千鈞髪の召集
『達也君が、警察へ……!?』
わず私の声がずった。弁護士の息を呑む音が受話器の向こうから聞こえる。
『ええ。美氏から常な暴力と銭の搾取を受けていた彼ですが……昨夜、美氏の自宅から持ちされたある類を持って自首同然に駆け込んできたのです。それは、の病院関係者に対する巨額の止め料の領収と、ご主が作成した公正証遺言の「原本」でした』
背筋にたいものがった。 美はただ待っていたのではなかった。浩司の余命が幾ばくもないとるや否や、遺言執の続きを引にめるため、達也を脅迫して類の隠滅を図らせようとしていたのだ。
そのだった。
バタンッ!
静寂を保っていた病のドアが、凄まじい勢いで蹴破られた。
「ちょっと! どういうつもりよ、ゆみさん!!」
甲いの匂いとともに崩れ込んできたのは、黒い毛皮のコートを肩に羽織り、サングラスをに乗せた美そのだった。そのろには、級スーツにを包んだ見らぬ若い男——美が雇った私選弁護士が、類鞄を抱えて険しい顔で控えている。
「あけみ……さん……」
ベッドので識を取り戻しかけていた浩司が、掠れた声での名を呼んだ。だが、美は瀕の男を瞥すらせず、私に向かって真っ直ぐに股で詰め寄ってきた。
広告
「とぼけないでよ! 浩司さんの個座、あなたが止めたでしょ!? おかげで私のサロンの座まで差し押さえの続きが始まったじゃない! 何の権利があってそんな真似するわけ!?」
「権利ならあるわ。私は浩司の戸籍の妻ですから」
私が平然と答えると、美は勝ち誇ったように唇を吊りげ、バッグから枚の茶い封筒を叩きつけるようにベッドの元へ投げした。
「妻? 笑わせないで! そんな肩き、この遺言のには何の役にもたないのよ! 浩司さんが遺した公正証遺言! 自宅も預貯も、すべて私と……私のする息子、誠君に相続させるっていてあるのよ!」
病の空気が瞬で氷結した。
誠が信じられない面持ちでちがり、美を睨みつけた。 「お……今、なんて言った?」
「あら、誠君。ちょうど良かったわ」 美は芝居がかったつきで両を広げ、誠に向かって甘ったるい笑みを向けた。
「聞いて驚かないでね。あなたが、母親だと信じてきたそのな女は、ただの赤のよ。私こそが、あなたを産んだ本当の母親なの。浩司さんと私が、あなたを派に育てるために、あの女に預けていただけなのよ!」
その言葉が落ちた瞬、浩司が酸素マスクを引きちぎり、血の混じった唾を吐き散らしながら絶叫した。
「やめろぉぉぉっ!! 美、言うなぁぁっ!!」
広告
しかし、美は浩司の制止を「病気の譫言」と切り捨て、得げに胸を張った。 「何を隠す必があるのよ、浩司さん! 勝ったのよ、私たちが! さあ誠君、こんな貧乏くさい女とは縁を切って、私と緒にいらっしゃい!」
誠の顔がりで蒼になり、拳がくなるほどく握りしめられた。 触即発の危。美の弁護士が酷な笑みを浮かべ、法執の通告を掲げようとした、その刹だった。
廊の奥から、響き渡る々しい音。
「そこまでだ」
く鋭い声とともに病の扉を押しけたのは、配の威厳ある紳士——弁護士だった。そしてその背には、痩躯の、しかし瞳に消えない痛みのを宿したの青がっていた。
青の顔を見た瞬、美の喉からヒッと引きつった音が漏れた。
「た……達也……!? なんで、あんたがここに……!?」
全ての役者が、この狭くたい病に揃った。 のきにわたり紡がれた巨な嘘が、いま、の元に晒されようとしていた。