"二十六年目の告白" 第4話
貸庫の封筒と、暴かれたの罠
病のドアが控えめにノックされ、誠が戻ってきた。には温かい緑茶の入ったコップがつ握られている。
「母さん、遅くなってごめん。売が混んでて……」
誠は歳、商社で働く真っ直ぐな青に育っていた。父親の歪んだ執着がんだ莫な教育投資の恩恵を受けながらも、私の背を見て育った彼は、決して傲にならず、の痛みがわかる優しいを持っていた。
「ありがとう、誠。温まるわ」
コップを受け取ると、誠はベッドの浩司に目を落とし、痛ましそうに眉を寄せた。
「親父……急に容態が悪くなったのか? さっき廊にいたら、すごい騒ぎになってたけど」
「……し、取り乱しただけよ。お薬で今は落ち着いているわ」
私はお茶をすすりながら、膝ののバッグにそっと指を滑らせた。には、昨、の貸庫から引きしてきたばかりの、分い茶封筒が収まっている。
は、のへその緒つ、血液型のカルテの写し、そして——興信所がかけて洗いした、浩司と美のすべての銭取引の記録だった。
浩司はに義母が界した直、私に面したがのと建物を勝に担保に入れ、融関から千百万円もの根抵当権を設定して融資を引きしていた。
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そののほぼ全額が、美名義の座へ、そして美が経営していた実体のないエステサロンの運転資へと注ぎ込まれていた。
夫は自分がんだ、自宅も財産もすべて美に遺贈する旨の公正証遺言を、公証役で密かに作成していたのだ。正妻である私を無文でに迷わせ、美と誠(と信じ込んでいる息子)にすべてを継がせるという、完璧なシナリオ。
だが、のことだ。 夫が脳血で倒れ、救急搬送されて識になったそのの午、私は弁護士を通じて、ある決定な法続きを完させていた。
「母さん」
誠が私の元を見つめ、真剣な面持ちでをいた。
「さっき売ので……派な格好をした女のを見かけたんだ。親父のスマホを持ってきたんだけど、そのから信じられない数の着信が入ってて……『美』って、誰なの?」
誠が差しした夫のスマートフォンの画面には、着信の通が件以、そしてLINEのメッセージプレビューが気に並んでいた。
『浩司さん、どういうこと!? 座からおが引きせないのよ!』 『に問いわせたら、法定代理から座凍結の続きが取られたって言われたわ! 今のマンションのローン、どうする気なの!?』 『返事しなさいよ! まさかあのバカ女にづかれたんじゃないでしょうね!?』
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誠の顔がりと困惑で歪んでいた。 「親父……裏で、こんなと繋がってたの? 母さんにばあちゃんの介護を全部押し付けて、活費もし渋ってたのに……裏で別の女にを送ってたのか!?」
「ええ。そうよ、誠」
私は逃げも隠しもせず、静かに真実を認めた。
「お父さんは、その女性に毎を送り続けていたわ。私たちがむこのを勝に担保に入れてまでね」
「なっ……!?」
誠が絶句したその、病の空気を震わせるように、私のスマートフォンが鳴した。 画面に表示されたのは、弁護士の番号だった。
私は通話ボタンを押し、スピーカーフォンにした。
『佐藤さん、です。先ほど庭裁判所と債権回収会社から連絡が入りました。……ご主が美氏のために組んでいた連帯保証契約と担保設定の件、あなたが差し止めた公正証無効の申てについてですが……変な事実が判しました』
弁護士の緊迫した声が、狭い病に響き渡る。
『美氏が現居しているタワーマンション、そして彼女のサロンの抵当権ですが……すでに第者の融グループへ転売され、今夜付けで全額の括返済期を迎えています。総額は、遅延損害を含めて億千万円。……もしまでに支払われなければ、美氏は即座に破産し、詐欺破産罪で刑事告発される筈になっています』
息を呑む誠の隣で、私はたい笑みを唇の端に浮かべた。
だが、弁護士の報告は、それだけでは終わらなかった。
『そしてもうつ……美氏が育ててきた息子、達也君のことです。彼が先ほど、警察署へ駆け込みました』