"義母が倒れた夜、隣人が私を止めた理由" 第1話
午の着信
「母さんが脳卒で倒れた。青葉総病院へ運ばれたんだ。俺は張先で戻れない。美緒、今すぐをしてくれ」
午分。枕元の携帯話から聞こえた夫の声は、妙にだった。私は寝着のにコートを羽織り、台所のかりさえつけずに玄関へ向かった。歳の義母、子さんは血圧の薬をんでいる。先週会ったときは元気そうだったけれど、脳卒は触れなく起きることもある。私はそう自分に言い聞かせ、夫が指定した病院までの順をに描いた。
達也は昨の夕方、泊の阪張だと言ってていった。なのに話の向こうからは、の音もの声も聞こえなかった。静かすぎるとったのは瞬で、すぐに義母の顔が浮かんだ。結婚して、子さんは私に厳しいことも言ったが、病気のときに見捨ててよいではない。私は鍵を握ったまま階段を駆けりた。
話を切る、私は度だけ「お義母さんは識があるの」と尋ねていた。達也は答えず、「医者に聞けば分かる。とにかくく」と繰り返した。救急を呼んだのは誰か、義母はどこで倒れたのか。いつもの私なら確かめたかもしれない。けれど、話の向こうの切迫した声に押され、質問すること自体がな為のようにえた。
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私はその夜、自分がどれほど簡単に急かされてしまうのかをることになる。
の晩、義母は私に話をかけてきていた。庭の柿が今はよく実ったという、取り留めのない話だった。達也が帰宅すると、私はその話を伝えたが、彼は「母さんのことは俺がやる」とく言い、すぐに携帯話を持ってベランダへた。私は仕事の話だとい、く聞かなかった。いまえば、そのとき彼が誰と何を話していたのか、確かめる方法はもうなかった。
アパートの駐には灯が本しかない。自分のいへづき、運転席の取っに指をかけたとき、背から名を呼ばれた。「佐伯さん、には乗らないでください」。振り返ると、階の角部にむ氷さんがっていた。いつもは作業着姿で壇の入れをしているなのに、その夜は暗いの着を着て、片にさなライトを持っていた。
「すみません、今は急いでいるんです。義母が倒れて」「承しています。だから止めています」。氷さんはへづかず、私の元と元を交互に見た。「お願いです。朝までは、あの病院へかないでください」。私はわず声を荒らげた。何を根拠にそんなことを言うのか。の命に関わる夜に、どうして見ずらずにい隣の言葉を信じなければならないのか。
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氷さんは答える代わりに、の輪の内側へライトを向けた。アスファルトのに、昨夜はなかった暗い染みが広がっている。をづけるまでもなく、属と油の混じった匂いがした。「触らずに見てください。ブレーキ系統から液が漏れています。備良か故かは、まだ分かりません」。私はの鍵を握り直し、初めて自分の呼吸が浅くなっていることに気づいた。
「先ほど警察へ通報しました。救急の確認も別の方法でめています。まず、ここをれましょう」。氷さんの調は落ち着いていたが、の指先にはわずかな緊張があった。私がのの染みを見つめていると、彼はもう度、はっきり言った。「今夜、あなたをここかららせたいがいます」。その言葉のを尋ねるより先に、私の携帯話が再び震えた。画面には、夫の名が表示されていた。