"夫が毎日3回トイレを磨く理由" 第5話
誰の許を得て調べた?
部のの空気が、瞬にして凍結した。
母が台所で洗い物をする音だけが、くのノイズのように響いている。玲央はタッパーからをすと、ゆっくりと顔をげた。
その瞳の奥にあったのは、昔の恋をいして揺する男の顔ではなかった。
警戒。底れない、徹な敵。
「……誰から聞いたの?」
「……」
「昔付きってたよ。それが何か?」
「どうして、今まで言も教えてくれなかったの? 彼女、どうしていなくなったの?」
玲央はポケットからティッシュを取りし、指先を丁寧に拭いながら、の籠もらない声で言った。
「逃げたんだよ。俺のを持ってね。それだけの話だ。……紗季、誰が俺のことを嗅ぎ回ってるんだ?」
その酷なに射すくめられ、私は言葉を失った。
翌、私は美代子のアドバイスを受け、このの計を徹底に洗うことにした。
がの経済権は、表向きは私が管理していることになっていた。玲央の与は全額共同座に振り込まれ、私が活費を引きして計簿をつけていたからだ。
しかし、通帳の数字を突きわせていくうちに、私は背筋が粟つような戦慄を覚えた。
共同座の残は、々の活費と子供の習い事、費で毎ほぼゼロになるよう調されていた。本当にきな——結婚目にマンションのローンを括繰りげ返済した百万円、に義母が緊急入院した際の術費用百万円、そしてのキッチンの全面リフォーム費用百万円。
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それらのは、度もこの共同座を通っていなかった。
『君は細かい費や用品だけ見ててくれればいいよ。きなは俺が全部やっておくから』
玲央がいつも優しく囁いていたその言葉。あれは「妻への気遣い」などではなかった。私に、このの真の資の流れを切把握させないための、完全な目隠しだったのだ。
私は玲央がの、寝のクローゼットの奥に隠されていた、鍵付きの古いスチール製類ケースをこじけた。
権利、古い保険証券の束。その番底からてきたのは、に設され、すでに解約された冊の古い方の通帳だった。
座名義は——『池田玲央』。
パラパラと頁をめくった私の指が、ある箇所で完全に凍りついた。
失踪した元婚約者・佐々遥の勤め先としき製菓会社からの与振込、そして彼女の個座から百万円、百万円、万円と、定期にが玲央の座へ吸いげられていた記録。
そして、ページの番。
最に入された百万が、ATMの引きし限度額いっぱいに連引きされ、残がほぼゼロになった付。
それは——佐々遥が警察に方届をされたの、わずか『』だった。
さらに、通帳の挟み込みのポケットから、古びた枚のメモ用が滑り落ちた。
そこには、玲央の几帳面な跡で、信じがたい『程表』がりきされていた。
『1114 苛性ソーダ、業務用パイプクリーナー(酸性)購入』 『1115 湯器温度設定Max(65℃)確認』 『1116〜18 浴・トイレ封鎖。骨片破砕および配管フラッシング』 『1119 実倉庫へ移送』
「……っ!?」
あまりのおぞましさに、喉から鳴が漏れそうになった。その——。
カチャ。
寝のドアが、音もなくいた。
逆のにっていたのは、腕組みをした玲央だった。いつ帰ってきたのか、玄関のチャイムも音も、切聞こえなかった。
彼の線が、私の震える元——に落ちた通帳と、メモ用にゆっくりと落ちた。
「……紗季」
玲央の元が、のように歪んだ。
「誰の許を得て、俺の部を漁ってるんだ?」