"夫が毎日3回トイレを磨く理由" 第4話
の計と消えた女
「紗季、お母さんから話だよ。お父さんの血圧ががって倒れそうだって。実に顔をした方がいいんじゃないか?」
キッチンの引き戸の隙から、玲央の顔がぬっと覗いた。いつからそこにっていたのか、音すら聞こえなかった。
私は全の毛穴が逆つ恐怖を覚えた。母が玲央に話などしてくるはずがない。父の血圧はずっと正常だ。この男は、今この瞬も、呼吸をするのと同じ自然さで嘘を吐いている。私をこのからざけたいのだ。
「……ええ。莉乃を連れて、実へくわ」
私は震えるで莉乃の着を着せ、逃げるようにをた。
エレベーターがする、美代子の言葉が脳内で渦を巻いていた。
『あのトイレには、誰かが解体された痕跡がある』
実にを寄せたその夜、私はもできなかった。夜を回った頃、玲央から淡々としたメッセージが届いた。
『警察の調べは終わったよ。のための鑑定に数かかるらしくて、それまでトイレは使用禁止だって。怖がらなくていいよ、リフォーム業者が昔流した建材のゴミか物の骨の能性がいって言われただけだから』
るでもなく、取り乱すでもなく、美代子が何を言ったのかを問いただすことすらしない。その気なほどの平穏さが、私の神経をじわじわとすり減らしていった。
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翌、実のリビングでぼんやりとスマートフォンを眺めていた私の元に、美代子から枚の画像ファイルが送られてきた。
それは事件の資料ではなく、警察庁が発した【方者捜索願い】のポスターのスクリーンショットだった。
写真に写っていたのは、丸顔にショートカットの、緑のダウンジャケットを着た女性。懐っこそうな笑顔を浮かべている。
部に記載された文字を、私は息を呑んで読んだ。
『氏名:佐々遥(ささき はるか) 当歳』 『失踪期:の』 『最終取り:京都練馬区——(私たちのマンションの所)』
画像のに、美代子からのいメッセージが添えられていた。
『こののこと、玲央さんから聞いたことある? ……彼女、失踪する直まで、玲央さんと婚約同棲していた元恋よ』
臓が氷に浸かったようにえ切った。
結婚して。玲央は「過にした恋なんてしてこなかったよ」と笑っていたはずだった。その彼が、私がこのに嫁ぐわずかまで、結婚を提に同棲していた女性がいた? そして、その女性がこのマンションの界隈で忽然と姿を消した……?
そのの夕方、玲央が何事もなかったかのように実へ「豚の角煮」を差し入れにやってきた。
母や莉乃ので完璧な父親を演じる彼の背を見つめながら、私はたい麦茶を差しすふりをして、喉の奥から絞りすように尋ねた。
「……玲央。あなた、昔……『佐々遥』っていうと付きってたの?」
コトン。
玲央がテーブルに置こうとした角煮のタッパーが、乾いた音をてて静止した。