"夫が毎日3回トイレを磨く理由" 第3話
タイルに挟まれた
「……な、何でもないわ」
私の喉から絞りされた声は、自分でも驚くほど震えていた。必で平静を装おう配管の奥で、臓が鐘を打っている。
「何でもないのに、どうしてそんなに震えてるの? 美代子先も」
玲央の笑みから、完全に温もりが消えっていた。能面のような無表が、剥きしの皮膚のからせりがってくる。
その、美代子が静かにをいた。
「玲央さん。さっき、洗面台の横の隙に落としたピアスを拾おうとしたんです」
「……ええ。見つかったんですよね」
「落とした所をスマートフォンのライトで照らした、偶然、排トラップの奥に引っかかっているものを見つけました。……もう、警察には連絡を入れました。まもなく到着します」
玲央の呼吸が、ほんのわずかに止まった。
リビングに響くのは、莉乃がブロックを崩す乾いたプラスチックの音だけだった。数秒の窒息しそうな沈黙の、玲央はふっと角をげた。
「警察? ……何を見つけたっていうのさ。排溝の詰まりにゴキブリでもいた?」
「警察が到着してからお話しします」
美代子は歩も退かなかった。玲央はそれ以何も言わず、ただく息を吐きすと、ソファーの端に腰をろした。
分。サイレンを鳴らすこともなく、静かにの私警察官が玄関に現れた。
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鑑識の材が入ったジュラルミンケースを提げた男と、代半ばのベテラン刑事。
「本当に通報したんだね」
玲央が私を見た。その差しは、りというよりも、自らの完璧にコントロールされた箱庭を乱暴に踏み荒らされたことに対する、底れない淡さだった。
「どうぞ、好きなだけ調べてください。毎僕が磨いてるから、のホテルより綺麗だといますけどね」
玲央は自らんでトイレのドアを全にした。あまりに堂々としたその態度に、捜査員たちも瞬顔を見わせたほどだった。
鑑識がに入り、ドアが閉められた隙に、美代子は私をキッチンの奥へと引っ張った。
「美代子、お願いだから教えて……! 体何があったの? 何が見えたのよ!」
私の懇願に、美代子は唇を噛み締め、声を極限まで押し殺して囁いた。
「……洗面台と壁のタイルの隙。スマートフォンのLEDで照らした、排トラップの結部に、い薬品で腐した属片が引っかかっていたの。古いアクセサリーの留め具のようなものよ。そして、タイルの目の奥……奥くにこびりついていた、微な骨片」
「骨片……? 魚か何かの……?」
「の、歯の破片よ」
ので、巨な鐘が乱打されたような衝撃がった。目のがく滅する。
「う、嘘でしょ……見違いじゃないの? だって、このは結婚するに玲央が買った古マンションで、リフォームだって——」
「タイルの目に、力な塩素系漂剤と酸性薬剤を何度も塗りたくったような自然な化反応があった。それに、ドア枠の裏側には、肉では見えないけれど、血痕を削り取ったような古い研磨痕が残っていたのよ」
美代子の瞳に、法医学者としての徹で残酷な確信が宿っていた。
「紗季、今すぐ莉乃ちゃんを連れて実へきなさい。あのトイレには……誰かが『解体』された痕跡がある」