"母の小さな食卓" 第3話
奨学という名
母は台所で湯みを洗っていた。を流したまま同じ茶碗を何度もこする元を見て、私は弟から聞いたことを今すぐぶつけるのをやめた。代わりに蛇を閉め、「俺が洗う」と言って布巾を受け取った。母は何か言いたげだったが、私の横顔を見てから居へ戻った。
私は器を片づけると、悠へ話をかけた。学になった息子は、研究で卒業制作をしているだった。話にるなり「おばあちゃんの誕、けなくてごめん」と言った声が、いつもより幼く聞こえた。
「悠。奨学のことを聞きたい」
沈黙があった。私はそのに、息子が嘘をついていた理由を考えようとした。責めるための言葉なら、いくらでもてきた。しかし、の私がどれほど頑なだったかも覚えていた。会社の倒産を告げた晩、悠がアルバイトを増やすと言った、私は「おは勉だけしていろ」と鳴ってしまったのだ。
「父さん、いつか話そうとってた。志おじさんから毎振り込んでもらってる。でも、元のおはおばあちゃんだよ」
「どうして俺に言わなかった」
「父さん、あの頃、朝も夜も働いてたでしょう。俺が学をやめると言うと、自分が何とかするって顔を真っ赤にした。おばあちゃんは、父さんをこれ以追い詰めたくないって」
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悠は学の学費が分かる画面を送ってきた。授業料は奨学だけではりず、祖母からの万円を賃と活費に充て、りない分をアルバイトで補っていた。私は画面を眺めながら、息子の部へったに古い気ストーブが置かれていたことをいした。悠もまた、裕福な学活を送っていたわけではなかった。
「志おじさんは、振り込んだ額を毎俺にらせてくれた。領収みたいに残しておけって言われたから、全部ある。俺、就職したらしずつ返すつもりだった」
「返すって、母さんは何と言ってる」
「返さなくていいって。でも俺は、返したい」
悠は、昨の休みに祖母を訪ねたの話もした。母は駅まで迎えにくと言い張ったが、改札につ悠の姿をなかなか見つけられなかったらしい。「最はの顔が分かりにくくてね」と笑ったのだと聞いて、私は胸の奥にさなを覚えた。
悠は話を切る、「父さんに黙っていたことは、やっぱり悪かったとう」と言った。私は返事に迷ったが、「今度から困ったら先に相談してくれ」と伝えた。息子は「父さんもね」と返した。その言が胸に残った。私は族へ相談することを負けだとい、息子にまで同じ考えを教えていたのかもしれない。謝るべきなのは、嘘をつかれた私だけではなかった。
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話を終えると、私は自分の座をき、今の料と計の支を確かめた。倒産から半ほど定な仕事を続け、今は運送会社の配係として正社員に戻っている。きな余裕はないが、とは違う。まず今から、母に必な費を私が負担しようと決めた。相談もなくを振り込むのは母をらせるだろうから、緒に買い物をし、何が必か聞くつもりだった。
寝る、母のために温かい麦茶を入れた。母は湯みの縁にを添え、「悠は元気かい」と尋ねた。私は「元気だよ。卒業制作で忙しいって」と答えた。母はしたように笑い、続けて「学をるまで、あとしね」とつぶやいた。
その、母が私の顔ではなく、声のする方を探すように首をかした。私は試しにしれてってみたが、母の線はいつまでも私の肩の向こうを向いていた。