"母の小さな食卓" 第2話
毎万円のき先
私は通帳を閉じ、薬箱と緒にたんすのへ戻そうとした。けれど、最初に見えた額がかられず、もう度だけいてしまった。通帳を勝に見るべきではないと分かっていた。それでも、末ごとに同じ振込先が回続いているのを確かめたには、指先がたくなっていた。
最初の振込は、悠が学へ入学したの終わりだった。そこから休みも正も、額は度も変わらない。私が再就職してようやく毎の収入が定した頃にも、母は同じ額を送り続けていた。私は何度も数字を指でなぞり、母がその々に何を諦めていたのか像した。数字の列だけでは分からないことが、かえって恐ろしかった。
万円が回。百万円になる。母は父の遺族と自分ので暮らしており、以聞いた計額はに万円ほどだった。貯を取り崩しているとしても、このの暮らしが楽だったはずはない。蔵庫のと玄関のりんご箱が、急につの答えを示しているように見えた。
私は台所へ戻り、母のに通帳を置いた。「落ちたから拾った」と説すると、母は瞬だけ唇を引き結んだ。すぐに「ありがとう」と言って引きしへしまおうとしたが、私はそのを止めた。
「志に、毎万円を送っているのか。
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いつからだ」
「のおのことは、母さんが決めることよ」
「それはそうだ。でも、母さんがろくにべずに送る必があるのか。志のが困っているなら、俺にも話してくれ」
母は線を卓の端に落とした。「あの子は困っていない」と言ったきり、黙り込んだ。私は弟が母に無理をさせているとい込んだ。そう考えれば、幼い頃から積もった満にも説がつく気がした。私は母の返事を待たず、携帯話を持って廊へた。
志は度目の呼びし音でた。背からのる音が聞こえたので、仕事帰りなのだろう。私は挨拶もせずに、通帳の振込について問いただした。
「お、母さんから、毎万円も受け取っていたのか」
「……兄さん、今、実にいるのか」
「母さんの誕だから帰ってきた。答えろ。あのを何に使った」
志はく黙った。私にはその沈黙が、言い訳を探しているにえた。もう度名を呼ぶと、弟はを止めたらしく、周囲の音が静かになった。
「俺が使ったんじゃない。悠の学費だよ」
悠は私の息子だった。、勤め先の建材卸会社が倒産し、私は歳で職を失った。悠はそのに学へ学する予定だったが、入学と活費の見通しがたず、度は学を諦めようとしていた。私は夜の配送や倉庫の仕事を探し、妻の真由美は勤め先の勤務を増やして、どうにか初度を乗り切るつもりでいた。
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ところがある、悠が「民の奨学に採用された」と笑って帰ってきた。毎万円の付があるから、からの仕送りを減らしていいと言ったのだ。私はそれを信じ、息子のでは丈夫な父親のふりを続けた。苦しい期に救われたとったそのが、母の座からていたとは考えもしなかった。
「母さんが言ったんだ。兄さんは誰かに助けられるのを嫌がるから、俺を通して悠へ送ってくれって。振込の記録は全部残してある」
「悠はっているのか」
「ってる。兄さんだけがらない」
私は廊の壁に背をつけた。母のために買った誕の菓子が、玄関の袋ので傾いていた。、私は自分の族が踏ん張ってきたとっていた。その元を支えていたのは、母の細いと貯だった。
話を切る直、志がい声で付け加えた。「兄さん、るなら俺じゃなくて、母さんが何を削ってきたか見てやってくれ」。その言葉だけは、すぐに聞き返すことができなかった。