"私にだけハズレ料理を出す義母の誤算" 第2話
仕組まれた確率
からへと季節が移り変わっても、子の「細」は衰えるどころか、巧妙さと湿さを増していった。
の義実めしの。献は、をかけて煮込まれた根と牛肉のすき焼きの煮物だった。
「真希さん、これ運んでくれる?」
台所で子から渡された私の取り分け皿。卓について蓋をけると、わず目を疑った。
隆や義父の鉢には、照りの良い牛肩ロースがたっぷりと盛られている。しかし、私の皿にあるのは、クタクタに煮崩れた結び滝と、角の落ちた根の切れ端ばかりだった。肉のかけらつすら入っていない。
「……お義母さん、これ、お肉が……」
「あら、ごめんなさいねえ! 鍋の底をすくったら、そればっかり入っちゃったのかしら。お肉、もう鍋に残ってないのよ。根にが染みてて美しいから、たくさん召しがれ」
子は無邪気な女のように首を傾げて微笑んだ。隣で義父が「おい、まだ鍋にし残ってないのか?」とを挟みかけたが、子は「お父さん、それ以べたら血圧に障りますよ」と素く遮り、会話を終わらせてしまった。
の夕会。メインはきなエビフライだった。皿に本、きつねに揚がったぶりのエビが積まれている。
「あら、ごめんなさい。何本か、殻を剥き忘れちゃったみたいで……誰のお皿にっちゃったかしら」
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子が運んできた私の皿に載っていた本。をかじると、のにジャリッ、ガリッとした異物が突き刺さった。背わたも取られておらず、い殻が尾の根元までびっしりと残されたまま揚げられていた。内を切らないよう慎に吐きしながら横を見ると、隆は「うめえ!」とサクサク音をててを頬張っている。
さらにがけた。豚ヒレカツの。
「柔らかくていいお肉が買えたのよ」
そう言われてされた私のカツは、噛み切れないほどブヨブヨとしており、はすべて真っな「豚の脂の塊」だった。ヒレ肉の切り落としに残った廃棄用の脂にパンをつけ、わざわざ私の分として揚げていたのだ。胸焼けと吐き気で、私は箸を置くしかなかった。
。鮮なアジのお造り。
「たまにはずつ別々に盛り付けてみたの」
丁寧にお付きで盛り付けられた刺。しかし、私の皿だけは、骨が本も抜かれていなかった。切れに入れるたびに、喉や歯茎に鋭い骨が突き刺さる。義父と隆の刺は、骨抜きで綺麗に処理されていたにもかかわらず、だ。
「茶碗蒸しもあるのよ。でも卵を割るの失敗しちゃって、殻が入っちゃったかも」
そう言って配られた茶碗蒸しのからは、の親指はある巨な卵の殻が、底からゴロリとてきた。
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——偶然。
すべてを子は「うっかり」「たまたま」という言葉で包み隠し、決して悪を認めない。そして私がしでも違をにすれば、隆が即座に「おの被害妄だ」「母さんにケチをつけるな」と鳴りつける。
私はダイニングのたい子に座りながら、子の楽しげな横顔をじっと見つめていた。
このは、私が耐えかねて声を荒らげる瞬を待っているのだ。になって騒ぎてれば、「嫁がヒステリーを起こして私を責める」と被害者の座に収まることができる。だからこそ、証拠の残らない、が見れば「些細な失敗」に見えるばかりを選んでいる。
私は拳を握りしめ、めきった脂のフライを無理やりみした。
だが、子はらなかった。
私が何も言わずに沈黙を守っていたのは、傷ついて委縮していたからではない。
この愚かな姑が、自らので逃げのない罠に踏み込んでくる瞬を、静かに、徹に待ち構えていたからだった。