"夕飯のカレーを笑った友人が、私のレシピを欲しがった" 第5話
鍋の向こう側
打ちげの案内が届いた翌、私は真理子に個別のメッセージを送った。
《打ちげのカレーは作れないよ。文化祭の準備でレシピと試作を担当したから、今回は休ませてね》
既読はすぐについた。返事はしばらく来なかった。私は画面を伏せて、洗濯物を畳んだ。断るだけのことが、こんなに落ち着かないのは初めてだった。真理子は、頼みを断られるときの沈黙をよくっている。相がになって、こちらから理由を補したり、結局引き受けたりするのを待つのだ。
そのの夕方、彼女から話があった。「由美子さん、どうしたの?打ちげはみんな楽しみにしてるのに」
「今回は休みたいの」
「でも、カレーをすってみんなに言っちゃったのよ。私が作るのは難しいし、由美子さんのが番評判だったから」
「私が作るとは言ってないよね」
しの沈黙のあと、真理子は声を落とした。「そういう言い方をされると困るな。文化祭のこと、まだってるの?」
「っているというより、私が作ったものを私の仕事として扱ってほしかった。それに、夕飯のカレーを何度も笑われたことも嫌だった」
「冗談じゃない。あれは庭の好みの話でしょ」
「そうだね。だから、私の庭の好みも尊してほしい」
真理子はく息を吐いた。「分かった。もういいわ」
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話は切れた。私は胸の奥がざわつくのをじながらも、決めたことを変えなかった。修司は台所から顔をし、「断れたんだね」と言った。私は「うん」と答えた。たったそれだけのことなのに、肩に載っていたい袋をつろした気がした。
翌、委員のグループチャットが騒がしくなった。真理子が「由美子さんは忙しいので、打ちげのカレーは私が別の方法を考えます」といていた。私の名をす必はなかったはずだ。数分、別の保護者から「由美子さん、何かあったの?」と個別メッセージが来た。私は「何もないよ。今回はで作らないだけ」と返した。
打ちげの、私は族と夕をべていた。修司が焼き魚を皿に置き、航が学の話をしている。真理子のでは、委員たちが集まっているはずだった。私はスマートフォンを見ないようにしたが、夜になって由からい連絡が来た。
《今、真理子さんが『カレーはおで頼んだ』って言ってる。由美子が作らなかったことは言も触れてないよ》
私はしほっとした。打ちげが無事に終われば、それでいいとっていた。けれど翌、学の広報サイトに打ちげの写真が掲載された。テーブルには、テイクアウトのカレー容器が並んでいた。記事には「真理子さんが配したカレーを囲み、文化祭の成功を祝いました」
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とある。
問題は、その写真のに添えられた文章だった。
《文化祭のカレーは、真理子さんの庭のをもとに、保護者の協力で準備されました》
私は何度も読み返した。真理子は、今度は自分ののだと言っていた。由が話で「これはさすがにおかしいよ」とった。私は返事をしないまま、記事の画面を保した。
数、真理子から話が来た。「広報の記事、見た?あれは学がいたんだから、私のせいじゃないよ」
「打ちげのカレーはおのものだよね。文化祭のカレーも、私のレシピをもとに作ったものだった」
「由美子さんのレシピを参考にしたのは事実でしょう。でもを決めたのはみんなだし、庭のって言っただけ。細かいことを気にしすぎ」
私は黙って聞いた。彼女は続けた。「それに、由美子さんは料理が得なんだから、こういう役をするのは自然じゃない?名をしてほしいなら、最初にそう言えばよかったのに」
「名の問題だけじゃないよ」
「じゃあ何なの?」
私は、その問いに答える言葉を探した。私が頼まれるたびに引き受け、彼女が柄を受け取り、私が嫌だと言うと気にしすぎだと返される。その繰り返しが嫌なのだ。けれど話越しの真理子に、すべてを説して分かってもらう必はないとった。
「これからは、頼まれてもできないことは断るね」
真理子の声が変わった。「そんなふうに言うなんて、由美子さんらしくない」
その瞬、私は気づいた。彼女が好いていたのは私自ではなく、断らずに応じる私だったのかもしれない。
話を切った直、由から画像が送られてきた。打ちげに参加した保護者が、真理子のの台所に置かれた袋を撮っていた。名入りの袋の横に、見覚えのあるクリアファイルがある。私が文化祭用に作った分量表だった。
そのに、真理子のきでこうかれていた。
《由美子さんのレシピ。にはさない》
その写真を見たとき、私は初めて、彼女が私の名を隠した理由をりたいとった。