"午前2時17分、亡き妻が病室を訪れる" 第2話
にくなった妻
「奥さま……ですか」
由は写真から目をせなかった。
画質の古いスナップ写真なので、昨夜の女性と完全に同じ顔だと断言できるわけではない。それでも髪型、輪郭、ち姿、黒いコートまで、記憶のの物とあまりにも似ていた。
「美佐子といいます」
修が言った。
久世美佐子。
享58歳。
くなったのは。
由は写真を返した。
「昨夜、私が見た方に……よく似ています」
「そうでしょうね」
その答え方が気になった。
驚いていない。
むしろ、どこか納得している。
「久世さん」
「はい」
「昨夜来ると、っていたんですか?」
修は窓のへ顔を向けた。
朝のがカーテンの隙から入っている。
「っていたわけじゃありません」
しを置く。
「ただ、来てもおかしくない気がしていました」
由はそれ以追及しなかった。
患者がを識する、くなった族の話をすることは珍しくない。医療者として、そこへ無理にをつけるべきではないことも分かっていた。
それでもつだけ確認した。
「奥さまは、この病院でくなられたんですか」
修の線が戻る。
「なぜそういます?」
「昨夜、病のにっていたからです」
修はし笑った。
「護師さんは、怖くないんですね」
「怖いというより、気になっています」
「そうですか」
しばらくして修は答えた。
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「この病院です」
由はわず息を止めた。
「、妻もここに入院していました」
同じ階だったのかと尋ねたが、修は首を横に振った。
当は病棟編成が違い、美佐子は階の内科病棟にいたという。
「病気だったんですか」
「はい」
それ以は話そうとしなかった。
午の業務が始まり、由も病をた。
だが夜勤けで自宅へ帰っても、昨夜の来事がかられなかった。
黒いコート。
712号。
をげた女性。
そして、誰も乗っていなかったエレベーター。
昼過ぎまで眠ろうとしたが、ほどで目が覚めた。
スマートフォンを見る。
病院から連絡はない。
仕事の問題は起きていない。
それでも胸の奥が落ち着かなかった。
夕方。
再び夜勤へ向かう。
病棟へがると、美咲が先に来ていた。
「昨のエレベーターなんですけど」
番に言った。
「設備のに聞きました」
「何て?」
「午217分に階で扉がいた記録は残ってるそうです」
由のが止まった。
「やっぱりいてた?」
「はい。でも変なんです」
エレベーターには運記録が残る。
何階から何階へ移したか。
どこで扉がいたか。
異常止がなかったか。
昨夜217分。
階で扉が度いている。
そこまでは由の記憶と致した。
「でも、その直にどこから来たかの記録がないんです」
「どういうこと?」
「普通なら階からがったとか、階から来たとか残るそうです。
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でも階で扉がいた記録だけ」
「故障じゃないの」
「設備のも最初はそう言ってました。でも点検では異常なしです」
美咲は声を落とした。
「それと、防犯カメラ」
病棟の廊そのものには患者のプライバシーカメラは設置されていないが、エレベーターホールには防犯カメラがある。
映像を警備が確認した。
午216分。
廊は無。
217分。
エレベーターの扉がく。
しかし、カメラには誰もりてこない。
その数秒。
由だけが画面へ入ってきた。
「そんな……」
「私も見せてもらったわけじゃないですよ。警備のがそう言ってただけですけど」
由は何も言えなかった。
昨夜。
自分は確かに女性を見た。
病のまで歩いた。
話しかけた。
をげられた。
「久世さんには?」
「言ってません」
「言わなくていい」
患者を必ににさせることではない。
由はそう判断した。
夜。
修の体調は昼よりし悪くなっていた。
呼吸が浅い。
医師が来て診察し、今夜は変化を注して見ることになった。
午頃。
由が酸素チューブを確認していると、修が突然尋ねた。
「今夜も夜勤ですか」
「はい」
「変ですね」
「慣れています」
修は微笑んだ。
そして壁計を見た。
「昨、何でした?」
由にはすぐが分かった。
「……217分です」
修の笑みが消えた。
「やっぱり」
「何がですか」
修は目を閉じた。
い沈黙。
「妻がくなったです」
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