"お湯を奪われた嫁" 第3話
「何よ! あの子がに入れてるおなんて、ほんの遣い程度じゃないの! あなたが代わりにしくせば済む話でしょ!」
「遣い程度……?」 裕介の乾いた笑いが漏れた。
「母さん……真理子が毎、いくらに入れてるかってて言ってるのか?」
「え? そ、それは……、万くらいでしょ? あの子の取りなんてたかがれてるんだから……」
「万円だよ!!」
裕介の絶叫が、朝のリビングに霊した。
「費で万、費で万千、用品で万千! 真理子は自分の取り万のから、毎万円もこのの座に振り込んでたんだぞ! それを全部、俺が被れって言われてるんだよ!」
「きゅ……万円!?」 静子の鳴ががった。 「嘘でしょ!? あの子がそんなに払ってたわけないじゃない! だって、買い物だっていつも普通のスーパーの……!」
「俺の料だけで、宅ローン万とのローン万払って、そのに万も乗っかったら、俺の元にいくら残るとってんだよ! 俺の遣いも、ゴルフも、全部吹きぶんだぞ!!」
ドアの隙から見えた夫の横顔は、青ざめ、脂汗でテカっていた。 私はえ切ったで、その景を見つめていた。
夫がり狂っている最の理由――それは、する妻が侮辱されたことへのりではなかった。 「自分の座から消える」への、浅ましい恐怖そのものだったのだ。
広告
「おはようございます」
私が音もなくリビングのドアをけると、言い争っていたがピタリとを噤み、弾かれたようにこちらを振り返った。 裕介はネクタイを曲げたまま引き攣った笑みを浮かべ、静子は気まずそうに目を泳がせながら、そそくさとキッチンカウンターの奥へとを隠した。
「ま、真理子……おはよう。あのさ、さっきのLINEのことなんだけど……」 裕介が擦り寄るように歩み寄ってきた。
私は彼を瞥もせず、キッチンへ向かうと、自分のマグカップを取りして気ケトルにを注いだ。 「昨夜、お義母様から確な訓をいただきましたので。稼ぎのないは、こののお湯を使う権利すらないと。でしたら、稼ぎのない私が、このの活費を拠する筋いもございませんよね」
「いや、あれは母さんが言い過ぎたんだよ! 俺からきつく叱っておいたから!」 裕介は必にを振り、静子を睨みつけた。 「ほら、母さんも謝って! 悪かったって!」
静子は唇を噛み締め、忌々しそうに顔を背けた。 「……悪かったわよ。でもね、真理子さん、族なんだから、そんな極端なこと言わなくても……」
「族?」 私はケトルが沸騰する音を聞きながら、静かに振り返った。 「族とおっしゃいましたか? 族なら、氷点の夜に帰宅したに『で洗え』と命じるのですか? 裕介さん、あなたもです」
広告
「えっ、俺!?」 裕介が胸にを当てて狼狽える。
「先週の夕の、お義母さんが私の皿の肉を減らしてあなたに盛った、あなたは何て言いました?『真理子はデスクワークだから肉なんていらないよな』と笑って受け取りましたよね」
「そ、それは……ただの冗談で……をませようと……」
「あなたのその無神経な『冗談』と『見て見ぬ振り』が、お義母さんに私を見す免罪符を与え続けてきたんです。私は昨、すべてを理解しました。こので私に支払われていたのは、敬でも謝でもなく、都のいい居候としての扱いだけだったと」
私はコーヒーを淹れると、ダイニングテーブルの端に腰をろした。 裕介が縋るようにテーブルに両をつく。
「頼むよ真理子、活費を全部俺に回されたら、本当に計が破綻するんだ! のローンだってまだ残ってるし、付きいのゴルフだって営業には必なんだよ!」
「あなたのの維持費とゴルフ代は、私の尊厳よりもいのですか?」
私の氷のように徹な問いに、裕介は息を呑み、言葉を詰まらせた。 をさない嫁には発言権がないと信じ込んでいた男が、いざその嫁のが引き揚げられる現実に直面し、醜悪な本性を剥きしにしている。
「来からの引き落とし座の変更続きは、すでにウェブから申請しました。
今末までは私の座から落ちますが、からはすべて裕介さんの座から引き落とされます。……しっかり計を管理してくださいね」