"産後5日、家を売られた私の人生やり直し" 第5話
夫は、老の会社にを借りに来ていた
久世征が実へ来たのは、そのだった。
黒塗りのが何台も並ぶようなことはなかった。
古い国産セダンが台。
運転していた50代の男性と久世のだけだった。
駅で見たと違い、久世は濃紺のスーツを着ていた。けれど威圧より先に目についたのは、以よりさらに疲れて見える顔だった。
母が仏へ案内した。
久世は座布団へ座るに、私と両親へくをげた。
「突然押しかけて申し訳ありません」
そして、さな呂敷包みをした。
「妻がくなる、私に言ったんです。切符をくださった方を必ず探して、お礼を言ってほしいと」
には枚のが入っていた。
妻がくなる数、護師に頼んでいてもらったいものだった。
《にわせてくださった方へ。夫を私のところへ返してくださって、ありがとうございました》
私は最まで読めなかった。
涙が落ちた。
駅で切符を渡した。
自分には何も残っていないとっていた。
実際には、のを切なの最期へにわせていた。
それだけで、あのを悔しなくて済んだ。
しばらくして、久世は自分のことを話した。
久世ホールディングス。
物流会社から始まり、現は倉庫、産、企業投資までう非グループ。
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久世自は数に代表職を退いていたが、今も相談役として部の投資案件に関わっている。
父は驚いた。
私は会社名を聞いたことがある程度だった。
「さん」
久世は枚のファイルをした。
「あなたのお話を聞いた、私自が直接あなたのご主を調べたわけではありません」
そこで度区切った。
「ただ、偶然ですが、うちの投資部へ先週持ち込まれた案件のに、この会社がありました」
表。
《T&Y NEXT株式会社 資調達提案》
臓がねた。
達也の会社だった。
「いくらを?」
「1億2000万円です」
私はわず笑った。
860万円を盗るようにして会社を作り、数週で使い始め、次は1億円以をから入れようとしている。
「私が何か言ったから、断るんですか」
久世は首を横に振った。
「それはしません」
私は久世を見た。
「投資は復讐に使うものではありません。事業として価値があれば、私で止めるべきではない」
その答えに、私はし驚いた。
「ですが」
久世は提案をいた。
「投資先が資の所について虚偽説をしている能性があるなら、話は別です」
創業資。
《代表者個資産》
そこに私のが含まれている。
久世は続けた。
「あなたが許してくださるなら、私が付きっている弁護士を紹介します。費用については、贈与ではなく正式な貸付にしましょう。
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あなたが活をて直した、無理のない範囲で返していただく。それなら受け取りやすいでしょう」
私はすぐには返事をしなかった。
何もかも老にやってもらえばいい。
瞬だけ、そんな考えが浮かんだ。
けれど、それでは達也から依する相が変わるだけだ。
「つ条件があります」
「何でしょう」
「私にできることは、全部私にやらせてください」
久世は笑った。
「もちろんです」
「弁護士さんも、私は自分で話します。類も自分で集めます」
「その方がいい」
「それと……投資の判断は、本当に普通にしてください」
「はい」
「私のために潰さないでください」
久世の目がし細くなった。
「分かりました」
私はをげた。
「お願いします」
翌週。
私は久世が紹介してくれた弁護士・佳代子と初めて会った。
は資料を通り見てから、はっきり言った。
「これはがかかります」
胸がし沈んだ。
「でも、戦えます」
顔をげた。
「まず婚届です。あなたが署名していないなら、無効を争う続を取ります。次に預。それからマンションの売却代と婚姻の財産関係を理します」
「達也の会社は?」
「会社とあなたの預の流れを混ぜないことです。会社は別法ですが、創業資へあなたのが入った証拠があるなら追います」
私は頷いた。
はもうつ資料をした。
婚届の写し。
そこに、証名。
由紀。
翔。
「この由紀さんが、ですね」
「はい」
「もうは?」
「分かりません」
は指で名を叩いた。
「調べましょう」
。
答えがた。
翔は、由紀の兄だった。
そしてさらに。
由紀自が、達也の会社で《取締役》として登記されていた。
の倫問題だけではない。
由紀は会社設にも、婚届にも関わっている。
が静かに言った。
「さん。このは、あなたがっていたよりずっとから準備しています」
私は息を止めた。
「どのくらいから?」
は通の資料をこちらへ向けた。
マンションの売却査定依頼。
私が妊娠8かだった付。
達也は、産の直にいついたのではなかった。
私のお腹がきくなり、では簡単にけなくなった頃には、もうを売る準備を始めていた。
そして、その資料のにはもう枚あった。
T&Y NEXTが久世グループへ提した資繰り表。
会社に残っている現。
私は数字を見て、わず聞き返した。
「……これだけ?」
が頷いた。
「このまま追加資が入らなければ、数かもたない能性があります」
私は初めて理解した。
達也は勝ったのではない。
私から奪ったを燃やしながら、必で成功者のふりをしているだけだった。
そして今。
その会社の命綱となる1億2000万円の審査類が――
私が最の切符を渡した老の会社に置かれていた。
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