"「父の31億を狙った泥棒女」と罵られた私。孤独な老人に贈った2180円のラーメンが、巨大金庫の上に供えられていた" 第14話
父が息子に残した
面会の所に、さくらは源蔵の旧宅を選んだ。
源蔵のからかが過ぎ、庭の梅にはさな蕾がついていた。内には務が持参した改修図面が広げられている。老朽化した基礎と根を補し、のを域の齢者が利用できる堂へ変える計画だった。
黒田のち会いを条件に現れた健は、以と同じのスーツを着ていた。しかし腕計はなく、革靴のつま先にはい傷がある。
「マンションの渡し期限を延ばしてほしい」
仏壇へをわせることもなく、健は用件を切りした。
「裁判になるにることには同する。でも再就職先が決まらない。保証会社の審査にも落ちた。せめて半、いやかでいい」
「美穂さんはどうされていますか」
「婚調を申しててきた。全部俺の指示だったと嘘をついている」
健は妻が提したメッセージを「夫婦喧嘩の部を切り取ったもの」と主張していた。方で、自分も美穂の求を示す記録を会社へしている。
「会社は4億8120万円全額を請求している。預も株もかせない。遺留分までこのままなら、本当に何も残らない」
「遺留分を請求する権利が、私の言で消えるわけではありません」
「だったら、く払ってくれ。受け取ったから会社へ返す。結果は同じだろう」
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黒田が説を引き取った。
「遺留分侵害額請求と、相続財産及び会社からの返還請求は、それぞれ当事者と債権の帰属が異なります。単純な相殺で終わる話ではありません。裁判所の判断か、適法なが必です」
「法律の講義を聞きに来たんじゃない」
「だからこそ、警察へすさないと引き換えに、権利放棄の署名を求めるようなことはしません。民事と刑事は別です」
黒田の声は静かだった。
健はさくらを睨んだ。
「親父は俺を見捨てた。あんたには31億円も残した。それでもりないのか」
「私は、あなたから何かを奪うためにここにいるのではありません」
「綺麗事を言うな。俺のも会社も、おが持っていった」
「会社は社員と入居者のいる法です。マンションも源蔵さんの名義でした。最初から、あなた個の所物ではありません」
健は言葉を失ったのではなく、言い返す材料を探すように部を見回した。その線が、奥の斎へ続く廊で止まる。
さくらは源蔵から受け取った古い鍵を取りした。
か、何の鍵か分からなかった。改修の理をめるで、創業の机の裏にさな箱が固定されているのを見つけた。鍵穴はぴたりとった。
「源蔵さんが、あなたへ残した物です」
箱のには現も権利もなかった。健の名がかれた封筒が通だけ入っていた。
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健は乱暴に封を切った。
便箋には、だけかれていた。
『おが欲しかったのは父親ではなく、父親がんだのだった』
健の指が、の端をくつまんだ。
「こんな物を読ませるために、俺をここへ呼んだのか」
「呼んだのは、あなたです」
さくらは神棚の段ボール箱を見げた。
「源蔵さんは最まで、あなたが自分から帳簿を戻す会を残していました。でもあなたはくなったの夜にも、証拠を消そうとした」
「俺は会社を守ろうとしただけだ」
「誰からですか。源蔵さんから? 田所さんから? それとも、記録を確認しようとする全員からですか」
健は返事をしなかった。
「私は会社へ請求を取りげるよう求めません。刑事告訴についても、第者委員会の報告を基に会社が判断します。マンションは、通された期限を守ってください」
「親父がんでいたこのより、もっと狭い所へけと言うのか」
「源蔵さんをこのへ移したとき、あなたは同じことを考えましたか」
健は便箋を折り畳み、内ポケットへ入れた。謝罪はなかった。助けを求める言葉も、もうてこなかった。
玄関をる、彼は改修図面を振り返った。
「ここを、どうするつもりだ」
「ひとりで事をする齢者が、温かい物をべられる所にします」
健は何も言わず、をていった。
か、マンションはした期限どおりけ渡された。残された具は所関係を確認したうえで、会社資産は回収され、の私物は指定先へ送られた。
会社の損害賠償請求では、部資産の換価と期返済を含む解協議がんだ。第者委員会の報告は捜査関にも提され、刑事責任については別の続きで調べられることになった。
誰かが枚ので、健を奈落へ落としたのではない。
彼がに押した61個の承認印が、つずつ自分のもとへ戻ってきたのだ。