"「父の31億を狙った泥棒女」と罵られた私。孤独な老人に贈った2180円のラーメンが、巨大金庫の上に供えられていた" 第13話
の切れ目で裂けた夫婦
代表取締役を解職されたの夜、健は港区のマンションへ戻った。
玄関をけると、いつも置かれていた美穂のヒールがない。リビングの照はついていたが、壁に飾られていた絵がされ、ダイニングテーブルのには鍵と通の封筒が置かれていた。
封筒のは、弁護士名で作成された婚協議の通だった。
「ふざけるな……」
健は美穂へ話をかけた。度目でつながると、背からホテルのような館内放送が聞こえた。
「どこにいる」
『あなたに言う必はないわ。今の連絡は代理を通して』
「自分だけ逃げられるとうな。お名義の座にもが流れている。偽の契約に署名したのもおだ」
『言われるまま署名しただけよ。会社の仕組みなんてらなかった』
「毎カードを使っておいて、らなかったで済むか!」
『役員の妻なら当然の活だと言ったのは、あなたでしょう』
美穂の声は震えていたが、謝罪するつもりはないらしい。彼女は自分が持ちした宝と現を「夫から贈与された個財産」だと主張し、健側の責任を全面に争う準備をしていた。
「親父の遺産が入ると分かって結婚活を続けていたくせに」
『それを言うなら、あなたも同じでしょう。お義父さんがくなった、最初ににしたのは庫だったじゃない』
話が切れた。
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健はスマートフォンをソファへ投げつけたが、画面は割れず、黒いまま井を映した。
翌週、御厨産の第者調査委員会は報告を公表した。対象はにわれた61件の送だけではなかった。法カードによる私利用、社用の無断使用、虚偽の注費、源蔵の会社印を使った契約が、件ずつ理されていた。
会社は健へ4億8120万円の損害賠償を求め、預と保株式の仮差押えを申してた。美穂に対しても、彼女自の座へ移された銭と、売却した宝飾品の代について返還を求めた。
美穂は代理を通じ、「夫の経営判断を信じていた」と回答した。しかし調査資料のには、彼女が社のうち社の名義の相談役として、960万円の報酬を受け取った記録があった。
夫婦は互いを守るどころか、相が主導したことを示すメールやメッセージを、それぞれの弁護士へ提し始めた。
美穂からされたメッセージには、健の言葉が残っていた。
『親父はもう会社へ戻れない。今のうちに使える分を移しておく』
方、健が提した記録には、美穂の求があった。
『来のパリ旅までに、別座へ1500万円入れて。お義父さんには分からないでしょう』
同じで同じを使っていたが、今度は相を沈める証拠を競って差ししていた。
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マンションの渡しについても、黒田は即の退を求めなかった。正式な所権移転、かの期限を設けた通を送り、残置物の扱いと搬方法を記した。
それでも健は期限を過ぎれば裁判になると分かり、別の賃貸物件を探した。しかし代表取締役の位を失い、額の請求を受けている状況では、希望していた級物件の保証審査に通らない。
美穂もまた、実にく置いてもらえなかった。親族は報される能性を恐れ、彼女にホテルへ移るよう求めた。ブランドバッグをつ売却したが、その代についても会社側から照会が入った。
ある夜、健は広いリビングで、コンビニの弁当をべた。の音だけが響き、向かいの子には誰もいない。
箸を止めたとき、古いで暮らしていた父の姿が初めてに浮かんだ。
だが、父が寒かったのではないかと考えるより先に、健は自分がかにどこへむかを計算し始めた。
その翌、黒田の事務所へ本の話が入った。
「さくらに会わせてくれ」
健は、マンションを失わずに済む最の交渉をするつもりだった。