"「父の31億を狙った泥棒女」と罵られた私。孤独な老人に贈った2180円のラーメンが、巨大金庫の上に供えられていた" 第6話
封夜、消されたはずの帳簿
自宅へ戻ったさくらは、卓に封筒を置いたまま、しばらくけられなかった。
夫がくなった、病院から渡された封筒をいしたからだ。には財布、腕計、割れたスマートフォンが入っていた。度封を切れば、もう本から何も受け取れないと認めることになる。今夜の封筒にも、似たさがあった。
それでも逃げるわけにはいかなかった。さくらは湯を沸かし、めるまで両でマグカップを包んだあと、丁寧に封をけた。
『さくらさんへ』
源蔵のは、そう始まっていた。
『まず、お詫びしなければなりません。私は自分の事をかさないまま、あなたの親切を受け取りました。あなたを試したかったのではありません。息子に活を握られたことを、隣にられるのが恥ずかしかったのです』
源蔵は、健に会社の実務を任せた判断が違いだったといていた。妻をくしたあと気力を失い、息子から「もう休んでくれ」と言われたとき、肩の荷がりた気がした。しかし通帳と印鑑を預けると、健は活費を減らし、会社へくも止めた。
『父さんは混乱している。へると危ない』
その言で、付きいのあった社員まで源蔵をざけるようになった。
源蔵は黒田と部税理士に連絡し、秘密裏に調査を始めた。
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だが、証拠が揃うに健を問い詰めれば、帳簿も送記録も消される。源蔵は悔しさをみ込み、古いで暮らしながら会を待った。
『そんな折、あなたは私に箱のラーメンをくださいました。値段ではありません。私が何者かを尋ねず、何を返せるかも計算せず、しかも私のつまらない誇りを傷つけない言葉を選んでくれた。その夜、私は久しぶりに、自分がまだであるとえました』
文字の部が滲んでいた。源蔵がきながら落とした涙なのかもしれない。
の最には、「、黒田先の説を最まで聞いてください」とあった。鍵については何もかれていない。
そのころ、御厨産本社では別のきが始まっていた。
午9を過ぎた経理部に、健が戻ってきた。財務部の田所真紀は、次決算の確認を理由に呼びされ、ひとりで待っていた。
「からの部委託契約を、全部してくれ」
「の午ではいけませんか」
「今すぐだ。特に、KMコンサルティング、都企画、アークサポートの社分」
田所は鏡の奥から健を見た。その社はいずれも、実際に業務をっている担当者を見たことがない。それでも毎、計680万円が会社から支払われていた。
「原本は社倉庫です。子データなら会計サーバーにあります」
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「じゃあ消せ。契約は終した。古いデータを残す必はない」
「監査に削除すれば、かえって問題になります」
健は机を叩き、田所へ顔をづけた。
「父親がんだばかりなんだ。余計な仕事を増やすな。俺は代表取締役だぞ」
田所は数秒黙ったあと、「承しました」と答えた。
健が部をると、彼女は施錠し、デスクの引きしから型の付け記憶装置を取りした。契約のPDF、請求、振込承認履歴は、源蔵の指示で半分ずつ複製してある。
田所は黒田へいメールを送った。
『指定された社のデータについて、健社から削除命令を受けました。原本と操作記録は保全済みです』
翌朝10、さくらは百法律事務所の応接にいた。
向かいには健と美穂、その隣にはが連れてきた弁護士が座っている。健は黒いスーツを着ていたが、喪章はなく、計だけが派にっていた。
黒田は公正証遺言の謄本を机に置き、作成の診断記録と公証の確認類を示した。
「御厨源蔵様は作成当、医師による認能検査を受けています。公証と証名が能力を確認し、読み聞かせの過程も映像で保されています」
「置きはいい。く財産のき先を読め」
黒田は遺言を読みげた。域の齢者配団体へ3000万円。勤務した社員の活支援基へ5000万円。
創業から支えた元社員にも、それぞれ遺贈がある。
健は苛ちながらも、最には部分が自分へ来ると信じていた。美穂へ声で「寄付は税対策だ」と説し、ネクタイをえる。
「残余財産である御厨産の株式、産及び融資産、評価額計約31億円については——」
健の元に笑みが浮かんだ。
「見返りを求めず、私をひとりのとして救ってくれたさくら様に遺贈する」
美穂が握っていたバッグの具が、い音をてた。
健は笑顔の形を残したまま、黒田を見た。
「……今、誰の名を読んだ?」
「さくら様です」
健は両で机を叩いた。
「の女に31億だと? ふざけるな! 親父がそんなことをする理由がない!」
黒田は答えず、机のに型の録音を置いた。
「理由は、源蔵様ご本からお聞きください」
再ボタンが押され、赤いランプが点灯した。