"「父の31億を狙った泥棒女」と罵られた私。孤独な老人に贈った2180円のラーメンが、巨大金庫の上に供えられていた" 第4話
父の遺体より先に庫を探す息子
玄関で警察官が制止する声がした。それでも男は、「内のに入って何が悪い」と鳴り、靴を脱ぎ捨てるようにして廊へがってきた。
斎へ現れたのは、沢のあるグレーのスーツを着た柄な男だった。腕にはいの計、革靴にはがりのがついている。ろから、い毛皮の襟がついたコートの女が続いた。いの匂いが、古いと線の匂いを押しのける。
「黒田、庫は無事なんだろうな」
男は挨拶もせずに言った。
「御厨健さん。まず、お父様がおくなりになった状況について——」
「そんな説はあとでいい」
健は黒田の横を通り抜け、型庫へ歩み寄った。扉に傷がないか調べるように掌をわせ、子ロックを何度も押す。
「暗証番号は変わってないのか。親父の誕じゃかないぞ」
「健さん、お義父さんの遺体はもう運ばれたの?」
美穂が尋ねた。だが、その声にしみはなかった。
「らん。救急のは帰ったんだから、どこかへ運んだんだろ」
「じゃあ、今にを確認できるわね。権利と通帳があれば、週けにはへけるでしょう?」
「ああ。本の物件を売れば、シンガポールのコンドミニアムにもが届く」
は源蔵のを悼む代わりに、まだいてもいない庫のを使う相談を始めた。
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さくらは言葉を挟まず、その会話を聞いていた。
源蔵が最のをどんな気持ちで過ごしたのか、しずつ分かり始めた。
「ところで、その女は誰だ」
健がようやくさくらに気づいた。
値踏みする線が、なニットと古いデニムのを往復する。美穂も眉を寄せ、ブランドバッグを胸元へ引き寄せた。
「まさか、のから何か持ちしていないでしょうね」
「さくらさんです。隣におまいで、源蔵様が——」
「隣の女が、どうして鍵のかかった斎にいる」
黒田の説を、健が遮った。
「親父がったのを見て入り込んだのか? 独居老に親切なふりをして、の所を聞きす連がいるとは聞いていたが、本当にいるんだな」
さくらの胸の奥に、たいものが落ちた。鳴り返したい衝より先に、神棚の便箋が目に入る。
——ひとりのとして扱ってくれた方。
源蔵は実の息子から、父親としてさえ扱われていなかった。
「私は警察と黒田先の確認を受けて、ここにいます」
さくらはそれだけ答えた。
「警察が入れたからといって、信用できる証拠にはならない」
健は腕計を見せつけるように袖を直し、さくらへ歩づいた。
「よく聞け。親父の産も会社の株も、この庫のも、ひとり息子の俺が引き継ぐ。赤のが円でも持ちせば、窃盗で訴えるからな」
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「あなたみたいながいると、遺品の確認もまないのよ」
美穂は先で笑い、を指した。
「用が済んだなら、さっさとていって。貧乏くさい格好でうろうろされると、何を盗まれるか分からないもの」
その言葉を聞いた黒田が、鞄からさな帳を取りした。反論はせず、刻との発言をき留める。斎の井くでは、防犯カメラの緑のランプが静かに点滅していた。
健はそれに気づかない。庫の扉を拳で叩き、黒田へ暗証番号を教えろと迫った。
「私の依頼は、最まで源蔵様おひとりです。あなたに庫をける権限はありません」
「親父はんだんだぞ。だったら次の依頼は俺だろうが」
「違います」
黒田の声はかったが、健の鳴り声よりよく通った。
「私は公正証遺言により、遺言執者に指定されています。相続財産の保全と目録作成が終わるまで、誰であろうと勝に持ちすことはできません」
健は瞬だけ黙り、すぐに歪んだ笑みを浮かべた。
「遺言? どうせ『全財産を息子の健に譲る』といてあるんだろ。回りくどいことをするな」
美穂はくもしたように庫を眺めた。その線がへき、神棚の段ボール箱に止まる。
「何よ、これ。こんな物、庫のそばに置かないでよ」
美穂は箱へを伸ばした。
「捨てればいいじゃない」
「その箱に触れないでください」
自分でも驚くほどい声が、さくらのからた。
美穂の指先が、段ボールまであと数センチのところで止まった。