"夫に4千円を頼んだら、4千万円振り込まれた" 第7話
と、……ちょうど加奈と結婚する直だ」
勇の声はく、擦れていた。
「回目のは、これでやっと並みの暮らしができると浮かれて、産のチラシまで集めてた。回目のも、これで加奈に苦労をかけずに済む、結婚式もまともに挙げられると信じ込んでた。でも……回とも、最終契約の直で相企業の都でに戻ったんだ。あのの、に入るはずだった希望が瞬でになる絶望を、俺は骨の髄までっている」
勇はテーブルのの拳を握り直した。
「ぬかびさせて、結局ダメでしたなんて言ったら、加奈がどれほど落胆するか。お母さんの病気でただでさえ限界まで追い詰められているおに、そんな残酷な博打を背負わせたくなかった。座に着するまでは、絶対ににしちゃいけない……そう自分に言い聞かせてたんだ。でも……」
勇は顔を歪め、くを垂れた。
「俺が違ってた。傷つけたくないなんて格好をつけて、番辛いに加奈を蚊帳のに置いた。夫婦なのに、おを信じて寄り添う勇気がなかったんだ。本当にすまない」
夫の誠実すぎる謝罪に、私の喉が詰まった。だが、胸の奥底で疼いていた澱のようなは、それだけでは消えなかった。
「……私だって同じだよ、勇」
私はポロポロと涙をこぼしながら、胸の内を絞りした。
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「今、話で千円を貸してって言った……私、どんな声をしてた? まるで、自分がしていること自体を謝るみたいに、怯えて、縮こまって……。勇の稼ぎがないから迷惑をかけちゃいけないって、勝に決めつけてた。でして、で計算を叩いて、限界になるまで相談すらできなかった」
私はテーブル越しに、夫の荒れたを見つめた。
「それって、勇をいやってたんじゃない。私が勇を頼るのを諦めて、信用していなかっただけなんだよ。おがないから言えない私と、おで傷つけたくないから言えない勇。形は違っても……私たち、とも同じように相から逃げてたんだ」
「加奈……」
「夫婦なのに、が千円の相談で泣きそうになるまで追い詰められてた。千万円が入ったことより……私たちがそこまで脆い関係だったことの方が、ずっとしくて悔しいよ」
静まり返った台所に、私の啜り泣く声だけが響いた。
をに入れた瞬に浮き彫りになったのは、贅沢への渇望ではなく、私たちが「相を気遣う」という美名のもとに築きげてしまっていた、しい孤独の壁だった。
翌朝、私たちは配した福祉タクシーに母を乗せ、隣町にある循環器病センターの度専来へと向かった。
窓を流れるの並み。私の鞄のには、昨ATMで発した千百万円の残細票が収められている。
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しかし、胸を締め付ける圧は、昨と何つ変わっていなかった。
病院の待は、消毒液のたい臭気と、子の軋む音、そして張り詰めた沈黙に支配されていた。母は子の端で、肩で息をしながらじっと目を閉じている。
「加奈」
隣に座る勇が、私の膝ので震えていたをそっと包み込んだ。
「財布、何回もけなくていいからな」
「……え?」
「さっきから、無識に鞄のの財布を探ってるだろ。もう銭の配はしなくていいんだ。今の検査代も、これからの入院費も、全部ここにある」
勇の温かいのひらに触れ、私は自分が無識のうちに「数百円の検査代の加算」に怯える癖から抜けせていないことに気づいた。おはある。物理には、この病院のあらゆる検査を受けさせるだけの資があるのだ。
だが、そのは、診察で担当医から画像データを見せられた瞬に、脆くも崩れった。
「結論から申しげますと、脈弁の化および狭は、極めて篤なレベルに達しています」
初老の専医は、母の臓の超音波画を指し示しながら、淡々と事実を告げた。
「臓から全へ血液を送りすメインの弁が、化によって完全に固まり、ストローの先ほどの隙しかいていません。この状態を放置すれば、数週から数ヶ以内に致な全を起こします」
「先、術は……胸をく術はできないんでしょうか」