"夫に4千円を頼んだら、4千万円振り込まれた" 第6話
まだのボロボロの僧だった頃から、私はこの子の秘密をってたんだよ」
「……?」
私の喉から、掠れた声が漏れた。目のにつ母と夫の顔を、信じられないいで交互に見つめる。
私と勇が職の共通のを通じて会い、結婚したのはのことだ。それよりさらに、代半だったはずの夫と、町の裏でさな衆堂をで切り盛りしていた母。交わるはずのないつのが、目のの暗い台所で本の線に繋がろうとしていた。
母は卓の丸子を引いて腰をろすと、机のの類束に目を落とし、く息を吐きした。
「あんたに黙っていたのは悪かったよ、加奈。でもね、結婚の挨拶で勇君がうちの敷居を跨いだ、私が止めしたんだ。『昔の恩返しだなんて変な勘違いをあの子にさせたくないから、墓まで黙っておくれ』ってね」
「恩返しって……どういうことなの、お母さん」
母は湯呑みを両で包み、い記憶の糸を繰り寄せるように語り始めた。
「、この子は毎うちのに来てたんだよ。襟の擦り切れた作業着を着て、顔も爪のも械油で真っ黒にしてね。頼むのはいつだって、番い百円の素うどん杯だけ。ご飯も鉢も付けず、麺を本残らずすすり終わった、お茶のポットを抱え込んで何杯もお湯をんで、胃袋を膨らまそうとしてたのさ」
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勇は決まり悪そうに線を落とし、きなを膝ので固く握りしめていた。
「父親をくにくして、寄りもなく、徒弟制度みたいな町ででこき使われてたんだろ? 若い男の子が、腹を空かせてお湯で飢えをごまかしてる姿なんて、堂の板掲げてる以、見て見ぬふりなんてできるわけがないじゃないか」
母は懐かしそうに目を細めた。
「だから言ってやったんだよ。『おい、僧。洗いに皿が積みでが回らないんだ。だけ皿を洗ってくれたら、余ったまかないをわせてやる』ってね。……本当は皿なんて、、分で片付く量しかなかったんだけどさ」
「気づいてましたよ」
勇が、微かに元を緩めて呟いた。
「あんな狭いで、皿が積みになるわけがない。でも……あのお母さんがしてくれた炊きての飯と、い豚汁と、里芋の煮物が、ぬほど美かったんです。涙がボロボロこぼれて止まらなくて……まれて初めて、誰かに『きてていいんだ』って言われた気がした」
「あんたが見事ないっぷりで平らげるから、こっちまで気持ちよくなったよ」
母はあっけらかんと笑ったが、その瞳にはうっすらと涙が膜を張っていた。
「それから半くらい、この子は仕事帰りにを伝いに来てくれた。ある、の親方から『国資格の技能検定を受ければ昇させてやる』と言われたのに、受験料の万円がどうしても払えなくて諦めようとしてたんだ。
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だから私が、来と再来の皿洗い代の払いだって言って、無理やり万円を握らせて願をさせにったのさ」
「その資格があったから……」勇は顔をげ、私の目をまっすぐに見据えた。「俺はあの技術ベンチャーに転職できたんだ。そこで超精密ベアリングの設計を任され、料の代わりに株を渡された。……あの、お母さんが俺に飯をわせて、万円の背を押してくれなかったら、俺のはとっくにあの裏で終わってた」
の万円と、温かい杯のまかない。
それが巡り巡り、の歳を経て、いま私の目のにある千万円という巨額の盾となって帰ってきたのだ。
話を聞き終えた私の胸を満たしたのは、だけではなかった。
激しい羞恥と、自己嫌悪の波が元から押し寄せていた。
「……じゃあ、勇」私は震える声で夫に問いかけた。「どうして、その株の買い取りがんでることを、ヶも私に隠してたの? そんなに派な理由があったなら、なおさら話してくれればよかったじゃない」
勇は固く唇を噛み締め、痛みに耐えるように眉根を寄せた。
「……怖かったんだよ、加奈」
「怖いって、何が?」
「あのベンチャーの株はな、過に回、との買収交渉があったんだ。