"兄夫婦を亡くした日、5歳の双子を家族にした" 第4話
「もちろんです」
私は封筒をバッグにしまった。
帰宅すると、向が玄関までってきた。
「美緒ちゃん、今遅い」
「ごめん」
「蒼依が泣いた」
リビングでは、蒼依が織さんのスカーフを抱いたまま眠っていた。
私はその隣に座った。
兄たちは私を頼っていた。
それは嬉しかった。
同に、恐ろしくもあった。
私なら守ってくれる。
そう信じて残してくれた2を、絶対に裏切れない。
バッグのには、《で決めさせないこと》とかれたファイルと、まだけていないが入っていた。
それでも私は、その夜、蓮へ連絡した。
《、し会える?》
数秒に返信が来た。
《もちろん。何でもいい》
私は画面を閉じた。
兄夫婦が「必ず相談しろ」と名を残した相に、私は相談するつもりなどなかった。
別れを告げるつもりだった。
蓮と会う夜、私は眠れなかった。
向と蒼依のに横になり、暗い井を見つめながら、16の記憶を何度もいした。
兄は決して裕福ではなかった。
だった私には隠していたが、医学部へ入ってから計簿を見てしまったことがある。兄は昼の仕事のあとに週2回、の倉庫で夜勤をしていた。織さんはパートから正社員になり、自分たちの婚旅の積まで解約していた。
卒業式の、私はではなく黒いアカデミックガウンを着ていた。
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兄は会のろで泣いていた。
「何泣いてんの」
そう笑うと、兄は目元を拭って言った。
「うるせえ。元取ったとっただけだ」
「何の?」
「らん」
織さんが横から笑った。
「このね、美緒ちゃんが国試験受かったも泣いたんだよ」
私は2に育ててもらった。
だから今度は私が返す。
その考えは、私のではあまりにも自然だった。
翌の夕方、蓮と待ちわせたのは、私たちが初めてく話をしたさな公園だった。
蓮は仕事帰りのスーツ姿で来た。
「ごめん。待った?」
「ううん」
彼は私の顔を見て、すぐに隣へ座った。
「眠れてないだろ」
「しは」
「嘘つけ」
以なら笑えた言葉だった。
蓮は兄夫婦の事故をってから、何度も連絡をくれた。葬儀にも来て、親族への挨拶まで伝ってくれた。
だからこそ、これ以は頼れなかった。
私はの指輪を見た。
4か、このと結婚するはずだった。
居も探し始めていた。
子供はいつか欲しいね、と話したこともある。
けれど「いつか自分たちの子供を持つ活」と「から5歳の双子を育てる活」は、同じではない。
私は指輪をした。
蓮の表が変わった。
「美緒?」
「ごめん」
のひらに載せた指輪が、夕方のを反射した。
「私、向と蒼依を育てる」
「うん」
「だから……結婚はできそうにない」
蓮はしばらく何も言わなかった。
「もう回言って」
「婚約をなかったことにしてほしい」
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「俺に相談してる?」
私は目を伏せた。
「伝えてる」
「それ、相談じゃないよな」
声は静かだった。
鳴られるより苦しかった。
「蓮には関係ないことだから」
「関係ない?」
「兄たちに育ててもらったのは私。返さなきゃいけないのも私なの」
蓮の眉が寄った。
「子供を育てることが、借返済なのか」
「そういうじゃない」
「じゃあ何だよ」
「あなたを巻き込みたくないの」
蓮はく息を吐いた。
「巻き込まれるかどうかは、俺が決めることじゃないのか」
「あなたは優しいから、丈夫って言うでしょう」
「言うかもしれない」
「だから嫌なの」
私は声を震わせた。
「夜勤もある。子供たちは今、両親を失ったばかり。夜に泣くかもしれない。保育園から呼ばれるかもしれない。結婚したら、あなたまで全部背負うことになる」
「それを考える権利まで俺から取るのか」
何も言えなかった。
蓮の言っていることは正しい。
それでも私は、自分が犠牲になることより、誰かを犠牲にすることのほうが怖かった。
「ごめん」
私は指輪をベンチに置いた。
「今は、これしかできない」
ちがる。
「美緒」
呼ばれた。
私は振り返らなかった。
帰宅すると、向と蒼依はリビングでブロックを積んでいた。
「お腹すいた」
向が言った。
「今作るね」
蔵庫をける。
卵、豆腐、豚肉、野菜。
何を作れば5歳の子がぶのか、まだ分からない。
鍋に湯を沸かそうとしたところで、玄関のチャイムが鳴った。
計を見ると午8を過ぎている。
扉をけると、そこにっていたのは蓮ではなかった。