"兄夫婦を亡くした日、5歳の双子を家族にした" 第2話
そしてしばらくして、私が忘れられないことを聞いた。
「じゃあ、僕と蒼依は、どこにくの?」
私はその言葉を聞いた瞬、16の自分を見た。
両親の葬儀のあと、親戚たちが「誰が美緒を引き取るか」と相談していた部の隅で、私は同じことを考えていた。
――私は、どこへくんだろう。
私は向のたいを握った。
「どこにもかなくていい」
「ほんと?」
「うん。美緒ちゃんがいるから」
その点では、それがどれほどきな約束になるのか、私はまだ分かっていなかった。
そして兄夫婦が、すでに私の名をある類に残していたこともらなかった。
私が11歳のとき、父が病気でくなった。
母は女つで私と兄を育てようとしたが、無理がなったのだろう。5、母も病気でこの世をった。
16歳だった私は、親戚のに預けられることになった。
葬儀のあと、座敷に集まったたちは、私が聞いていないとっていたのだろう。
「なら、あと2でしょう」
「学にきたいって言ってるらしいぞ」
「うちは受験がいるから」
「女の子だから部も必になるしねえ」
悪があったわけではない。
だからこそ残酷だった。
私というではなく、これから何、いくらかかるかという話ばかりが続いていた。
その部へ兄が入ってきた。
当24歳。さな建設会社で働き始めて数しか経っておらず、貯もほとんどなかった。
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「美緒は俺が引き取る」
親戚の1が慌てて止めた。
「浩司、おは結婚したばかりだろ」
「だから何だよ」
「織さんだって困るでしょう」
兄の隣にいた織さんが笑った。
「困りませんよ。部も1つ余ってますし」
あとになって分かった。
部など余っていなかった。
2DKのさなアパートで、兄夫婦は寝にしていた部を私へ譲り、自分たちは居に布団を敷いて寝ていた。
卒業、私は医学部へみたいと言った。
格通が届いた、私は嬉しいより先に怖くなった。
「けない」
兄が眉を寄せた。
「何でだよ」
「学費、見たでしょう」
「見た」
「こんなの払えないよ」
奨学を使っても活費がかかる。6というもい。
私は泣きながら格通を兄へ返そうとした。
兄は受け取らなかった。
「受かったんだろ。だったらけ」
「でも」
「のことはが考える」
「私だってもうだよ」
「じゃあ自分のくらい、自分で諦めずに守れ」
兄はっていた。
その横で織さんが、私のを握った。
「美緒ちゃん。返さなくていいからね」
「絶対返す。働いたら全部――」
「違うよ」
織さんは首を振った。
「いつか美緒ちゃんのに、困ってるがいたら、そのにをしてあげて。それで分」
私はその言葉を、忘れないつもりだった。
実際、忘れなかった。
だからこそ今、私は兄夫婦の子供を放すという選択肢を持てなかった。
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葬儀の、黒いを着たたちので、向と蒼依だけが普段着だった。
祭壇の写真を見げて、蒼依が私の袖を引いた。
「ママ、なんで写真のなの?」
答えられなかった。
向は何も言わず、ずっと祭壇を見ていた。
葬儀が終わると、親族だけが残った。
やがて伯父がをいた。
「それで……子供たちのことなんだけど」
私は覚悟していた。
祖父母はすでに界している。叔父や叔母たちも60代、70代になっており、それぞれ自分の活がある。
「うちは暮らしだし、5歳が2はちょっと」
「方だから保育園も変わるでしょう」
「美緒ちゃんはどうなの? 独だし、お医者さんでしょう」
その瞬、向が私のを握った。
かった。
私は座布団ので背筋を伸ばした。
「私が引き取ります」
部が静まった。
伯父が困った顔をした。
「気持ちは分かる。でも美緒ちゃん、医者でしょう。夜勤だってあるんじゃないのか」
「あります」
「結婚もする予定だったよね」
「はい」
「簡単じゃないぞ」
分かっている。
それでも、誰も「私が代わる」とは言わなかった。
私はもう度言った。
「私が育てます」
向が私を見げた。
蒼依は織さんのスカーフを胸に抱いていた。
「ただし、親戚同士で決めればそれで終わり、という話ではありません。必な続きは全部確認します。仕事のことも調します」
医師としてにつけた、を抑えて話す癖が初めて役にった。