"「もう連絡しないで」と言った娘から48件の着信" 第9話
そこへ22ぶりに直が現れ、「本当はずっと会いたかった」と言った。
美咲は信じたかった。
父親に捨てられた6歳の自分を、28歳になった自分の結婚式で救い直したかった。
「でも、お母さんとお父さんたちが同じ席にいたら、全部うまくいかないとった。だから番私を許してくれるを先にした」
私は静かに頷いた。
「そこは、もう分かってるでしょう」
「うん」
美咲は顔をげた。
「お父さんたちには、式には来てもらわないって伝えた」
「私のため?」
「違う」
美咲は首を横に振った。
「私がまだ、あのを族として式に呼べるほど何も理できてないから」
その答えを聞いて、私は初めてしした。
母親を選んだから父親を捨てるのではない。
誰かを選ぶという考え方そのものから、娘がれ始めていた。
結婚式を延期して1かが過ぎた頃、美咲から相談したいことがあると言われた。
今度は「助けて」ではなかった。
「自分たちで決めるに、度だけ見を聞きたい」
その言い方に、私はし笑った。
輔さんとで式の規模を見直したところ、当初の見積もりより幅に費用をげることにしたという。
最初の計画は、招待客92。
総額は約430万円。
そのうち婦側の親族宿泊や送迎、装の部について、私は計120万円ほど援助するつもりでいた。すでに支払った40万円を除き、残り80万円はまだ渡していない。
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「お母さんのおを当てにしない形でやり直したいの」
美咲はそう言った。
「どうして?」
「は、お母さんがしてくれるって最初から予算に入れてた。でも、それって私が『もう連絡しないで』って言ったも、おだけはもらうつもりだったってことでしょう」
私は答えなかった。
実際、その矛盾には気づいていた。
ただし、を引きげて娘を困らせようとはっていなかったため、私からは触れなかった。
「40万円はもう式に入ってるから、それはお祝いとして受け取らせてほしい。でも残りは、自分たちで払う」
「活は丈夫なの?」
「そこもで計算した。数を60くらいにして、装も着減らす。親族の宿泊は必なだけこちらで負担する」
美咲はノートをいた。
そこには式費、料理、装、写真、引き物、宿泊費が細かくかれていた。
半、私が作った表ではない。
美咲と輔さんが自分たちで作ったものだった。
「輔君のお母さんにも、向こうがくすからそのままでいいって言われた。でも、それも断った。同士で競争するみたいになるの嫌だから」
私はノートを閉じた。
「なら、で決めた通りにすればいいとう」
美咲はし拍子抜けした顔をした。
「らないの?」
「何に?」
「せっかく貯めてくれてたのに」
「あなたのために使わなかったら、私が使うだけよ」
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そう言うと、美咲は初めてし笑った。
実際、私はその80万円を別の目へ回すことにしていた。
加入していた命保険を見直し、保障を減らして、老の医療費と活資へ回す相談を始めたのだ。
受取から美咲をして仕返しをするようなことはしなかった。
ただ、娘へきな額を残すことだけを目にした契約から、自分がくきるための設計へ変えた。
職の緊急連絡先も、第連絡先を妹へ変更した。
それも美咲を罰するためではない。
結婚してしい活を始める娘を、私の側からも「何かあれば必ず駆けつける」という役割からしたかった。
母親だけが娘に依してはいけない。
境界線は、双方に必だった。
そのの帰り際、美咲が玄関で振り返った。
「お母さん」
「何?」
「80万円、何に使うか決めた?」
私はし考えた。
「まだ。でも、ってみたいところはある」
「どこ?」
「の窯元巡り」
美咲が驚いた顔をした。
「で?」
「教の友達とくかもしれないし、かもしれない」
私は笑った。
「どちらでもいいでしょう」
美咲はしばらく私を見つめ、それからさく頷いた。
「うん。ってきたらいいとう」
22、娘のために空けていたおとを、自分へ戻す。
それは母娘の関係を終わらせることではなかった。
ようやく、親子以のも持つということだった。
織から封が届いたのは、それから2週だった。
差の名を見た瞬、捨てようとった。