"父が開けた祝儀袋" 第12話
「うん」
それだけ答えた。
それで分だった。
文にも、変わるまでにはがかかった。
嫁入り具を減らしたあとも、所の祝い事があるたびに「あそこの娘さんは箪笥を棹持っていった」「あのは披宴に百呼んだ」と気にしていた。
についた物差しは、簡単には消えない。
ある午、恭子とで茶をんでいる、文が昔の話をした。
「私が嫁に来たね、お義母さんが親戚ので箪笥をけたの」
「箪笥を?」
「何枚着物を持ってきたか、枚ずつ見たのよ」
恭子は眉をひそめた。
「そんなことされたの?」
「そういう代だったって言えばそれまでだけどね。『これだけ?』って言われた、本当に恥ずかしかった」
文は湯呑みを両で包んだ。
「だから恭子には、誰にも『これだけ?』って言わせたくなかった」
「うん」
「でも私、同じことしてたのね」
「同じ?」
「物の数で、娘が事にされるか決まるとってた」
母はし笑った。
「お義母さんの物差しを、ずっと持ったままだった」
恭子は返事をしなかった。
母が自分でそこまで辿り着いたことの方が切だった。
「恭子」
「何?」
「今の、狭くない?」
「狭いよ」
「箪笥、りる?」
「りてる」
「テレビは?」
「ない」
「便でしょう」
「たまにね」
で笑った。
文は部を見回した。
「でも、楽しそうね」
「うん」
それが母にとって番なことだったのかもしれない。
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物がなくても。
披宴が豪華でなくても。
夫が台所へっても。
娘は幸になっていない。
むしろ、自分で決められる活ので落ち着いていた。
結婚からく経った頃。
正吉が祝儀から使った万千円の返済が、最の千円になった。
恭子と浩司は、そのを受け取るためだけに実へったわけではなかった。
文の誕だった。
さな菓子折りを持ち、で夕をべた。
、正吉が帳から封筒を持ってきた。
「これで終わりだ」
恭子がを見る。
千円。
「かったね」
「おが毎数えとったからな」
「当たりでしょう」
正吉は笑った。
文も笑う。
なら、同じ話をしてこんな空気にはならなかった。
浩司が言った。
「お義父さん、の方は?」
「儲けはしとらん」
「それは残ですね」
「余計なお世話だ」
男も笑った。
恭子は最の千円を封筒へ戻した。
帰宅、《祝儀返済》といた封筒のを全部した。
浩司が聞いた。
「どうする?」
「貯に入れる?」
「それでもいいけど」
恭子はし考えた。
「半分だけ貯しよう」
「残りは?」
「で使おう」
「何に?」
恭子は笑った。
「今度は、自分たちで決める」
数、はさな古のテレビを買った。
品ではない。
嫁入り具として父が選んだ価なものよりずっとい。
それでもでを回り、値段を比べ、計簿を見て、「これなら買える」
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と決めた。
運ばれてきたテレビを畳の隅へ置く。
浩司が源を入れると、黒の画面がゆっくりるくなった。
「のよりさいな」
「部にはこっちの方がってる」
「確かに」
恭子は笑った。
欲しい物を持つことと、派に見える物を持つことは違う。
結婚してかけて、ようやくその違いが族全員にしずつ伝わった。
昭37の。
恭子と浩司のに娘がまれた。
産祝いのため、両の親や親戚がさな借へやってきた。
正吉も文も、蔵も志津もいる。
なら、どちらが何を持ってきたか、いくら包んだかで空気が変わったかもしれない。
そのは違った。
文は赤ん坊の布団を持ってきた。
「これは借してないからして」
恭子が吹きした。
正吉が横から言う。
「余計なこと言うな」
志津も苦笑した。
彼女との関係がすっかり良くなったわけではない。
価値観が違うこともある。
それでも志津は、恭子の料や計へ勝にをさなくなった。
浩司が何度も「で決める」と言い続けたからだった。
皆が帰ったあと、座卓のには産祝いの封筒が残った。
浩司がつに取る。
「ける?」
恭子は瞬、結婚式のをいした。
畳のに積まれた祝儀袋。
引をす父の。
自分に何も聞かず、札を別の封筒へ移していく姿。
あの、恭子が番つらかったのは、を使われたことだけではなかった。
自分のの祝い事なのに、自分には何も決める権利がないように扱われたことだった。