"父が開けた祝儀袋" 第6話
「何を?」
「どこまでが私たちの責任なのか」
その夜、卓に学ノートをいた。
が希望した費用。
恭子側の両親が追加した費用。
浩司側の両親が追加した費用。
そして婚礼とは関係のない父のの借。
つ目の欄が加わった。
問題はようやく、誰が悪いかではなく、誰が何を決め、その結果を誰が引き受けるのかという形になり始めた。
文は、父の借がの運転資にまで及んでいたとってから、ほとんどを利かなくなった。
恭子が実へくと、母は嫁入り具の領収を枚ずつ見ていた。桐箪笥は万千円。鏡台は万千円。布団式が万千円。テレビは万くし、当の計にとって決してさな買い物ではなかった。
「私、これ全部、恭子のためだとってた」
文が呟いた。
「お父さんもそう言ってたでしょう」
「でもの借まで祝儀で返すつもりだったなんてらなかった」
母はテレビの保証を握った。
「私がもっと派なものをって言ったから、お父さんも引けなくなったのかもしれない」
恭子はすぐに慰めなかった。
「お母さんが決めたものもあるよ」
「分かってる」
文は頷いた。
「だから、そこは私も逃げたくない」
母は翌、嫁入り箪笥を買った具へった。まだ居へ運び込んだばかりでほとんど使っていない鏡台と、追加で注文した箪笥について、返品できないかをげた。
広告
全額は戻らなかった。
運送代と数料が引かれた。
それでも現がし戻った。
テレビも販売へ相談した。
すでに封していたため返品はできなかったが、古品として引き取るを紹介された。
「所に何て言われるかしら」
帰り、文が言った。
「何て言われるとう?」
「嫁入り具を持たせたのに、すぐ売ったって」
「言わせておけばいいよ」
恭子が答えると、母は苦笑した。
「簡単に言うね」
「だって、そのたち、代払ってくれないでしょう」
文はわず笑った。
ほんの瞬だったが、母が世体かられた顔をしたのを、恭子は初めて見た気がした。
ただ、正吉は反対した。
「嫁入り具を売るなんてみっともない!」
「借したまま置いておく方が私は嫌よ」
文が言い返した。
「おまで恭子に吹き込まれたのか」
「恭子じゃない」
母は珍しく父を睨んだ。
「私が決めたの。私が見栄で増やしたものだから、私が減らす」
正吉は何も言えなかった。
恭子はそのやり取りを見ながら、母のでも何かが変わり始めているのをじた。
しかし父はまだの借について具体な数字をしていない。
万円だけなのか。
にもあるのか。
そしてなぜ、商売がそこまで苦しくなっていたのか。
翌週、その答えの部が向こうからやってきた。
荒物へ問の男が訪れ、正吉へ言った。
広告
「先分だけじゃありませんよ。これ以延ばすなら、掛けを止めさせてもらいます」
恭子はの奥で、その言葉を聞いた。
父の借は、披宴で返した分だけでは終わっていなかった。
正吉のには、まだ万円い買掛が残っていた。
借とは別だった。
問から商品を仕入れ、翌にまとめて支払うはずのがか遅れている。祝儀から融業者へ万円く返したことで借入残は減ったが、そのものの資繰りは改善していなかった。
「だったら、なおさら披宴をさくすればよかったでしょう」
恭子が言うと、正吉は首を振った。
「そんなことしたら、が苦しいと町にられる」
「もう苦しいんでしょう?」
「商売は信用だ」
「信用って、があるように見せること?」
「若いおには分からん」
父はそれで話を終わらせようとした。
だが恭子は初めて、正吉の見栄が単なる自だけではないことも理解し始めた。町の売は、問との掛取引や所の信用で成りっている。娘の婚礼を急に縮すれば、「佐伯のは危ないらしい」という噂がち、仕入先まで警戒するかもしれない。
だから正吉は豪華にした。
があるように見せるためにを借りた。
そして借りたを返すために、さらに勢を婚礼へ呼んだ。
矛盾している。
だが父のでは、すべて「を守る」
というつの理屈につながっていた。
「を守って、それで族が壊れてもいいの?」