"父が開けた祝儀袋" 第5話
父が追ってきた。
「勝に触るな」
「もう私の結婚を使ってるでしょう」
引きしのには仕入帳、売掛帳、領収がある。その番に、融業者から届いた返済予定のが挟まっていた。
正吉が取りげようとした。
恭子の方が先だった。
には、に借りた万円の返済予定がかれている。
そのに、業者の担当者がいたらしいりきがあった。
《既万円とわせ万円》
《 婚礼祝儀より万円以返済予定》
恭子の指が止まった。
「……何、これ」
父は何も言わない。
さらに、そのの裏には正吉自が計算した数字があった。
招待予定数。
当たりの祝儀見込額。
披宴費。
返済予定額。
父は、まだ枚も祝儀袋を受け取っていない点で、娘の結婚式からいくらが集まるか計算していた。
そして、そのをの借返済へ回す計画をてていた。
恭子が震えたのは、万円を使われたからではなかった。
披宴が豪華になった理由。
招待客が増えた理由。
父が最まで規模を落とそうとしなかった理由。
それまで「娘に恥をかかせたくない」という親だとっていたもののに、別の目が混じっていた。
「お父さん」
恭子は計算を父のへ置いた。
「私の結婚を、借を返すとして数えてたの?」
正吉は答えなかった。
その沈黙が、何より確な答えだった。
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だが、そのにはもうつ、恭子がらない名がかれていた。
《保証相談 》
浩司の姓だった。
恭子はゆっくり顔をげた。
「……に、何を相談したの?」
今度こそ、父の顔から血の気が引いた。
正吉は最初、「何もしていない」と言い張った。
だが《保証相談 》という文字が残っている以、恭子も引かなかった。文まで「何をしたの」と問い詰めると、正吉はようやく、披宴の週ほどに浩司の父・蔵への相談をしたと認めた。
「保証になってくれとは頼んどらん」
「じゃあ何を頼んだの?」
「もし祝儀でりなかった、して替えてもらえんかと聞いただけだ」
恭子は目を閉じた。
「それを、浩司さんはってるの?」
「らんだろう」
「私もらなかった」
「だから話す必はないとったんだ」
正吉にとって、娘夫婦へらせないことは「迷惑をかけていない」ことらしかった。しかし実際には、結婚から両の父親同士で、恭子のらないの話が始まっていた。
その晩、恭子は浩司へすべて話した。
浩司は驚き、すぐ実へ話した。
翌、でへく。
蔵は正吉から相談を受けたことを認めた。
「向こうも商売が変らしいからな。娘の祝い事だし、困ったはお互い様だとった」
「お父さん、おをしたの?」
浩司が聞く。
「まだしとらん」
「まだ?」
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恭子が反応した。
蔵は気まずそうに咳払いした。
「披宴の祝儀でりなかったら、浩司名義で会社の共済から借りられんかという話はした」
浩司の顔が変わった。
「俺名義?」
「おは勤続もあるし、信用がある」
「何で俺に聞かずに」
「実際に借りてないんだからいいだろう」
「よくないよ」
それまで両親にく言い返すことのなかった浩司が、初めて声を荒らげた。
「結婚したら俺の信用まで両のになるのか?」
志津が横からを挟んだ。
「そんなげさな話じゃないでしょう。恭子さんのお父様が困ってるなら、娘婿がし助けるくらい」
「母さんは、このは『実の借を浩司に払わせるな』って言っただろ」
志津が黙った。
「自分が払うのは嫌だけど、俺の名ならいいの?」
浩司の言葉に、恭子は夫を見る目がし変わった。
までは「親がのためにしたことだから」と曖昧だった男が、自分の名義まで勝に使われかけて初めて、恭子がじていた怖さを理解したようだった。
帰宅、浩司は恭子へ言った。
「悪かった」
「何が?」
「最初、しくらい俺たちも払えばいいって言ったこと」
恭子は黙って聞いた。
「額の問題じゃなかったんだな。誰が決めるかの話だった」
「うん」
「俺たちが頼んでないものまで、『族のため』って勝に決められたら、次も同じになる」
恭子は初めて肩の力を抜いた。
方になってほしかったのではない。
同じ問題を、同じ所から見てほしかった。
「じゃあ、緒に決めよう」