"娘の就職祝いで夫は私を泥棒と呼んだ" 第12話
乾いたワイン
婚から、私は歳になった。
元の会社へ戻ることはなかった。従業員主体の法から経理責任者に誘われたが、私は部支援という形を選んだ。同じ組織へ戻れば、また誰かのを自分で埋めてしまうとったからだ。
私は本という元総務担当者、税理士資格を持つ学代の友と、さな経営管理事務所を始めた。仕事は族企業の帳簿理、権限分、事業承継の支援。最初の半は依頼がなく、婚で受け取ったおを事務所へ入れたくなるもあったが、限を決め、それ以は使わなかった。
最初の期契約は、父娘で経営する弁当会社だった。娘が経理をで抱え、父親がで資をかしていた。私はを責めるのではなく、承認者を分け、記録を残し、族会議と経営会議を別にする仕組みを作った。
「族だから信じられない、ということですか」と父親に聞かれた。
「族だから、疑わなくても済む仕組みを作るんです」
その会社から紹介が広がり、事務所はが活できる程度の収入を得るようになった。突然の成功ではない。見積を断られ、無料相談だけで終わり、夜まで規程を作った。その積みねだった。
千とはに度事をした。彼女は父親から連絡が来ても、私へ報告する義務はない。
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会うか、会わないか、自分で決める。半、彼女は度だけ隆司と会い、署名させたことへの謝罪を求めた。隆司は会社を守るためだったと繰り返し、千は途で帰った。
「許せなかった」と彼女は言った。
「許さなくても、へめるわ」
義母は自分のマンションにみ続けた。根抵当権は契約の説と続きに問題があるとして理され、部債務を負担することで放さずに済んだ。正に千とは会うが、私とは賀状だけの関係になった。
事務所の周、私たちはあのホテルのレストランを予約した。復讐のためではない。千が「今度はお母さんのお祝いを、同じ所でやりたい」と言ったからだ。
事の途、若い員がを滑らせ、ワインをテーブルへこぼした。員は顔を真っにして何度も謝った。
「丈夫ですよ」
私はナプキンでゆっくり拭いた。ワインはテーブルクロスへく広がったが、私のには滴もかからなかった。
千が笑った。
「お母さん、くなったね」
「違うとう」
私は窓ののかりを見た。
以の私は、耐えることをさだとっていた。夫の会社を守り、娘の失敗を避け、義母の嫌を損ねないことが、族を支えることだと信じていた。けれど黙って引き受けたものは、消えるのではない。いつか別の誰かへ回される。
私は盗んでいないを返さなかった。
自分がいていない言葉を認めなかった。
娘の選択を、守るという名目で奪わなかった。
それだけだった。
員がしいクロスを持ってきた。濡れた布がされ、いテーブルが現れた。
、顔にかけられたワインのたさを、私はもういせなかった。
「乾杯しようか」
私がグラスを持ちげると、千との仲も続いた。
何かを失わなかったではない。
失ったあと、自分の名で始め直しただった。