"四十九日の遺言" 第10話
澄子の印鑑は、彦の入院に正隆へ預けられていた。保険の続きに必だと言われ、実印と印鑑登録証を渡したという。遺言に添付された印鑑証も同じに取得されていた。正隆は母の信頼を使い、発計画の同まで先にえていた。
「あの子は、私をの階にませてくれると言ったのよ」
「建物を壊す契約に、お義母さんの部は残りません」
静は責める調を避けた。澄子が自分で事実を認めなければ、また息子の言葉へ戻るだけだ。片桐は向をずつ読み、解体費用、渡し期限、違約を説した。澄子は最まで読み終えたあと、印鑑登録証を紛失したと役所へ届けた。
そのはさいが、正隆への最初の拒絶だった。ただし澄子は、静へ謝ればすべて元に戻るとも考えていた。「族なのだから、裁判だけはやめて」と頼み、で正隆を説得しようと言った。
「族だから話しう、という言葉で、私は何度も帳簿を見せてもらえませんでした。今回は、事実を決めてから話します」
静は境界を示した。澄子の居所を守ることと、正隆の責任を曖昧にすることは別だった。
調査を続けると、アパートの賃だけでなく、建物所を使った会社がつ見つかった。いずれも正隆が代表か役員で、清掃業、品卸、設備管理という別々の業種を名乗っていた。
広告
実際の事務所はなく、郵便物は空き扱いの号へ届いていた。
そのうち社には額の税滞納があった。正隆は発契約のに会社を清算し、設備費や修繕費をの債務へ付け替える予定だった疑いがある。ドラッグストアから入る保証で穴を埋め、残りを自分の事業資にする。兄のを守るどころか、最の担保として利用していた。
静は税理士の協力を得て、と社の請求を照した。同じ蔵庫修理が社へ複請求され、実際にはしない清掃作業へ毎が流れていた。彦の押印がある類もい。
社の登記簿には、同じ話番号と号の所が使われていた。請求の宛先だけを変え、から会社へをかす仕組みは単純だった。清掃会社が設備会社へ作業を委託し、その設備会社が品卸から備品を買う。社を周したは、正隆の個座へ《役員貸付返済》として戻っていた。
税理士は、複雑に見せているが実態のない取引ほど活の痕跡がないと教えた。社員の交通費も、具の購入も、話の発信記録もない。するのは請求と振込だけだった。静は夫が毎それを承認した理由を考えた。弟へ直接を渡すより、会社経費に見せれば母にも妻にもられない。彦の沈黙は受けではなく、途から仕組みを維持するになっていた。
号へ届いた郵便には、正隆の会社が雇ったことになっている分の与細もあった。名を確認すると、は数にくなり、は県の親戚、もうは澄子だった。澄子は与を受け取ったことがない。架空件費として処理されたは正隆の座へ戻っており、母の名まで節税の具にされていた。
澄子名義の架空与について、税理士は修正申告が必になる能性を説した。被害者でも、名義が使われたの続きは残る。静は代せず、澄子自が税理士と面談するを決めるところまで見届けた。
夫は被害者であると同に、正隆の正を族のへ閉じ込めた協力者でもあった。その事実が、静には遺言の差し替え以につらかった。