"兄の結婚式に、実の妹の席だけありませんでした" 第4話
届いた返信は、あまりにも端だった。
『……え?』
続けて、もう通。
『私、いま式の受付通って、披宴会のにいるよ』
元から、どす黒いがざぶりと押し寄せてきたような覚に襲われた。呼吸が止まり、目眩がしてわず造りの欄干に縋りついた。
恵子が会にいる。それは、親戚が広く招待されていることの、かしようのない証拠だった。母の「族だけのさい式」という言葉は、誤解などではなく、私をざけるためだけに吐かれた完全な虚偽だったのだ。
それでも、私ののどこかに往際の悪い疑が残っていた。恵子の実は昔から父と仲が良かった。もしかしたら、恵子の父——私の叔父だけが、親族の代表として特例で呼ばれただけではないのか。
震える親指で、私は文字を打ち込んだ。
『族だけじゃないの? 会、何くらいいるの?』
送信してすぐに届いた恵子の答えは、私ののに残っていた最のを、無残に叩き壊した。
『何言ってるの? 親族席、うちの両親もいるし、千葉の叔父さんたちも全員来てるよ。会社のたちも友もたくさんいて……全体でくらいはいるよ?』
。
その数字が網膜に焼き付いた瞬、運の面の青さも、観客の歓声も、すべてがい世界ののようにを失った。
見たくない、と本能が叫んでいた。
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だが、凍りついた私の指は、無識のうちに別のSNSアプリをちげていた。検索窓に、兄の学代からの親友で、元で広告代理に勤めている男のフルネームを打ち込む。
彼のアカウントは、数分に更されていた。
『親友・津幸介の結婚披宴! 歳、最のスタート!』
眩いばかりのシャンデリアに照らされた、内でも指折りのホテルの番きな披宴会だった。幾つもの丸テーブルには豪奢なが飾られ、フォーマルスーツや留袖を着た参列者たちがグラスを掲げている。砂の席では、純のドレスにを包んだゆかさんと、引き締まったタキシード姿の兄が、満面の笑みで並んでいた。
画面をスクロールする。親族席の円卓を捉えた写真があった。
そこには、メッセージをくれた恵子だけでなく、何も顔をわせていなかった縁の親戚までが笑顔で座っていた。さらに、その隣のテーブルには、母が趣のサークルで付きっている友たちの姿までが確認できた。
母の友が座っている席がある。い親戚が座っている席がある。
もの「親しいたち」のに、実の妹である私の席だけが、最初からつも用されていなかったのだ。
「今回は本当に親しいだけなの」
あのの母の、妙に甘ったるい声音が、呪詛のようにので反響した。
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りよりも先に、全の血液がの底から引いていくような、猛烈な羞恥が込みげてきた。波をてまいと自分を納得させ、で国へ旅ち、「兄を祝福している物分かりのいい妹」を演じていた自分の姿が、たまらなく滑稽で、惨めで、浅ましくえた。
スマートフォンがので激しく振した。恵子からの着信だった。
私は通話ボタンを押すことができなかった。今、彼女の声を聞けば、自分がどんな声をげて崩れ落ちてしまうか分からなかったからだ。親切で連絡をくれた恵子に、この惨めな姿を晒すわけにはいかなかった。
着信が切れるのを待ち、私は源ボタンを押しした。
「源を切る」のアイコンを、迷うことなくタップする。
暗転した漆黒の硝子画面に、のに吹かれて蒼になった自分の顔が、霊のようにぼんやりと映っていた。私はそのたい硝子の板を鞄の底へ乱暴に押し込み、ファスナーを固く閉ざした。
その夜、ホテルの部に戻った私は、靴を脱ぐ気力すらなく、ベッドの縁に崩れ落ちた。
の効いた内は息が詰まるほど乾燥していたが、指先のたさは向に抜けなかった。カーテンを閉め切った暗がりので、私は両で顔を覆い、声を殺して度だけ涙を流した。
歳の、黒柱だった父が建築現のから転落し、腰との骨を複雑骨折した。
命は取り留めたものの、い遺症が残り、現復帰の目処は完全に断たれた。