"兄の結婚式に、実の妹の席だけありませんでした" 第3話
の文字を見た、ようやく喉の奥のつかえがしだけ取れたような気がした。
誰の目も届かない、誰も私をらないい所へ逃げたかった。族の幸福なから自らを切りし、たいののにを置くことだけが、当の私に残された唯の防段だった。
、朝。
千歳から速エアポートに乗り継ぎ、私は午過ぎの樽駅にりった。改札をると、肌を刺すような気が頬を打った。見げる空は抜けるように青くく、港から吹き寄せる潮が古い造りの並みを吹き抜けていく。
角の片隅にある堂に入り、湯気のつ温かい鉄砲汁と、いくらが散らされたさな丼を注文した。運ぶごとに、体の芯に温もりが染み渡っていくのをじる。周囲にはきなスーツケースを引いた国観客や、楽しげに肩を寄せう若いカップルが溢れていた。
スマートフォンの源は切っていなかったが、バッグの底にある革製ポーチの奥くに沈めてあった。誰からも連絡が来るはずはないと分かってはいたが、画面の黒い硝子を見つめること自体がひどく恐ろしかったのだ。
事を終え、私は樽運沿いの畳の遊歩をで歩き始めた。観客を乗せた力が軽やかな音をてて横を通り過ぎ、面には青空と赤煉瓦の倉庫群が鮮やかに映り込んでいる。
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(これでいいんだ)
たい空気をく吸い込みながら、私は自分に言い聞かせた。
兄は今頃、控でタキシードに腕を通し、緊張した面持ちで鏡を見つめているだろう。母は留袖の帯を締め直しながら、誇らしげに周囲へをげているはずだ。そこに私の居所はなかった。けれど、私は私で、こうして美しい国の景のにっている。惨めになる必はない。これは私が自分で選んだ、私だけの休なのだから。
その、コートのポケットの奥、バッグので微かな振が伝わってきた。
ブ、ブ、とく途切れるバイブレーション。度きりではなく、数秒のを置いて、執拗に度、度と震えを繰り返した。
観客たちの笑い声がのく、私は運の欄干にをつき、ち止まった。
凍えた指先で袋をし、バッグのファスナーをけた。ポーチの底から取りしたスマートフォンの画面には、メッセージアプリの通が件、さく灯っていた。
表示されていた名は「恵子(やまじ けいこ)」。
父方の従姉で、私より歳の女性だった。子どもの頃、休みや正には必ず互いの実をき来し、姉妹のように育っただ。になってからも、私がをいた際には真っ先にお祝いのを持って駆けつけてくれるなど、親戚のでは最も親密に連絡を取りっていた。
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画面のプレビューに浮かんでいた文字列は、あまりにもく、そして唐突だった。
『理ちゃん、今どこにいるの?』
畳ので、私のが完全に止まった。
恵子が兄の結婚式について言及していることはだった。だが、なぜ彼女がそのに私のを怪しんでメッセージを送ってくるのか、その理由が呑み込めなかった。母は確かに言っていたはずだ。「今回は本当に親しいだけのさい式」「極々内輪だけで済ませる」と。
もし、従姉である恵子やその両親が招待されているのだとすれば、母の言っていた「本当に親しいだけ」の定義はいったい何だったのか。実の妹である私を差し置いて、従姉が呼ばれる「内輪の式」とは何なのか。
指先がたく張り、画面をタップする指がわずかに震えた。
『お兄ちゃんの式のこと? 今回はすごくさい式だから、親戚も呼ばないって聞いてて。私は招待されてないよ』
送信ボタンを押すと、秒も経たずに「既読」のマークがついた。
しかし、そこから返信は途絶えた。分、分、分。画面の向こうで恵子がどんな顔をし、何を迷っているのかが、痛いほど伝わってくるような沈黙だった。たい運のがコートの裾を激しく揺らし、頬の覚が麻痺していく。
やがて、画面の部に「入力」の波打つアイコンが現れ、すぐに消え、再び現れた。