"月給55万円を削られた古参社員の静かな逆転" 第11話
その声は、かつて社で耐え忍んでいた老社員のものではなく、組織の命運を預かる堂々たる指導者のそれだった。
「鈴社。、私はあなたの父である先代社と共に汗を流し、この会社をちげました。先代はどんなに経営が苦しいでも、決して社員にをかぶせるような真似はしなかった。トラブルがあれば真っ先に現へり、々とをげ、夜には若社員を連れてい居酒で『すまなかった、次は頼むぞ』と肩を叩いてくれたものです」
佐藤の線が、の類へと落ちた。
「ですが、あなたはどうですか。先代が築きげた信頼をいつぶし、己の保のために息をするように嘘を吐き、尽くしてきた社員を平気で贄に捧げようとする。……もはやあなたには、のにつ資格など微もありません」
「黙れ! 負け犬のくせに偉そうに説教するな!」
激昂した鈴社がちがろうとしたその瞬——。
ドンッッ!!
鳴のような轟音が会議を揺るがした。 会が、両で力任せにマホガニーのデスクを叩きつけたのだ。
「がグループを愚弄するのも、いい加減にしたまえ!!」
歳の老総帥から放たれた凄まじい覇気に、鈴社は息を呑み、再びに崩れ落ちた。田は恐怖のあまりガタガタと全を震わせ、今にも失禁しそうな顔をしている。
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「鈴君。君は本当に、自分の会社で何が起きているのかを理解していないのだな」
会は徹なつきで、元に冊の分い茶のファイルを投げ捨てた。 バサリ、と音をててに散らばったのは、佐藤が提したあの極秘記録だった。
「ひっ……!?」
散乱した類の先にあった用を見た瞬、田の顔から完全に血の気が引いた。 そこには、田が導入したシステムの設計仕様と、図に除されたセキュリティパッチの詳細、そして——。
「架空注費の送細……!?」
鈴社がのを枚拾いげ、目を丸くした。
「そうだ」会が吐き捨てるように言った。「君が『優秀な若リーダー』と持て囃していたその男は、がグループ向けのシステム保守費と偽って、毎実弟のペーパーカンパニーに会社のを正送していたのだよ。……その額は、奇しくも毎きっちり万円だ」
「ご、万……!?」
鈴社のきが完全に止まった。 ゆっくりと首を巡らせ、ろの田を睨みつける。その顔は、りと信じがたい裏切りへの絶望で、気に変していた。
「田……てめえ……! これはどういうことだ!? 佐藤の料を削れと言ったのは、おだな!? 会社の赤字を埋めるためだと言って……!!」
田はつんいになりながら、必にずさった。
「ち、違います社! 僕は……僕は言われた通りに処理しただけで……!」
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「嘘をつくな!!」鈴社がびかかり、田の胸ぐらを掴みげた。「横領してやがったのか!? 俺を騙して、会社のをネコババしていたのか!!」
「せよ! おだって同罪だろうが!!」
追い詰められた田が、突然狂ったように叫び声をげた。
「座のクラブのツケや、テスラのを経費で落とすためにダミー会社を作れって指示したのは社、あんただろうが!! 僕はそのお零れをもらっただけだ! 自分だけ被害者面してんじゃねえよ、この無能代目が!!」
醜悪極まりない罵りいが、最峰の役員会議で繰り広げられた。役たちは誰止めようともせず、ただややかな軽蔑の差しを注いでいた。 佐藤は静かに目を閉じた。かつて自分がのすべてを捧げた会社が、欲に目が眩んだ者たちのによって、内側から音をてて自壊していく。その無残な結末に、胸の奥で筋のい愁が吹き抜けていった。
「証拠なら、ここにもありますよ」
佐藤が胸ポケットから取りした枚の用を、会が静かに受け取り、円卓の央に滑らせた。 それは、田がシステムへ完全移する直、ベースで回覧されていた稟議の原本コピーだった。そこには、ダミー会社への自然な支払いを特認する、鈴社直の署名と実印がはっきりと押印されていた。
「彼らが『古くて非効率なゴミ』として切り捨てようとしたきの台帳と稟議こそが、デジタルで巧妙に隠蔽された犯罪を暴くかぬ証拠となったのです」