"夫と実母に裏切られたので、静かに二人との縁を切りました" 第5話
私、港区の神町に事務所を構えております【・川法律事務所】の弁護士、川(しらかわ)と申します。……直様の、代理を務めております』
臓が、ドクンと嫌なね方をした。 直の代理弁護士。 協議婚が成した直に、なぜ弁護士が? 財産分与の請求か? それとも、アパートの解約を撤回させようとする脅迫か?
「……直さんの弁護士さんが、私に何の用でしょうか。婚はすでにので成しておりますが」
『ええ、婚の届が受理された事実は確認しております。本は、直様からお預かりしていた【婚協議(案)】の条項確認、ならびに……直様が先ほど当事務所へ駆け込んで来られまして、緊急で確認せねばならないな事実が発したため、ご連絡いたしました』
川弁護士は、度言葉を切り、く息を吸い込んだ。 その声のトーンが、単なる事務連絡から、極めて刻な法続きの匂いを帯びたものへと急変した。
『様。……単刀直入にお伺いいたします。直様が提された案の第条に、こう記されております。 【甲(直)は、乙(織)の実母・静が居する賃貸物件の賃料相当額として、毎万円を乙の指定座へ支払う。乙は、当該物件の賃貸借契約の名義としての位を、将来にわたり無条件で継続・維持するものとする】……と』
織の血の気が、瞬で引いた。
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毎、を織の座に振り込むから、名義は、織のままにしておけ。 直は、最初から自分が契約者になる気など爪の先ほどもなかったのだ。 自分はを払う「優しいスポンサー」の顔をし、面倒な契約責任、連帯保証責任、孤独や事故が起きた際の原状回復責任のすべてを、婚も永に織に背負わせ続けるつもりだったのだ。
「……そのようなは、がひっくり返ってもしません」 織は受話器を握りしめ、氷のような声で告げた。 「その物件は、すでに通常規定に基づき、来末での解約届を管理会社へ提済みです」
受話器の向こうで、川弁護士が息を呑んだ。 そして、次に彼がにした言葉が、織の全を戦慄させた。
『……やはり、そうでしたか。直様は「元妻も完全にしている」と主張されておりましたが、虚偽の申告であったと判断せざるを得ません。……しかし、様。問題は、アパートの契約だけではないのです』
「……どういうことですか?」
『直様が、先ほど当事務所の応接で取り乱しながら吐されたのですが……彼は、あなたのアパート解約を阻止するため、そしてご自の隠し資産を確保するため、ある【違法な段】を使って、あなたの個報と資産座にを伸ばした形跡があります。……様、今すぐご自のメインバンクの残と、くなられたお父様の遺産分割協議をご確認いただけますか? ……そこには、あなたが決してってはならないはずの“数字”が記されているはずです』
受話器の向こうから、直の「おい、先! 余計なことを喋るな!」
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という狂乱じみた号が、微かに漏れ聞こえた。
ツ、ツ、ツ……。
通話が、方に切断された。 湯の静寂のに、織はただ、凍りついたようにち尽くしていた。
父の遺産分割協議? 隠し資産? そして、直がを伸ばしたという、私の座――?
パンドラの箱の蓋が、今、最悪の音をてて引きちぎられようとしていた。
午の執務、織は退届を提し、央区本にあるメガバンクの支へとタクシーをらせた。
ので、川弁護士の穏な警告がサイレンのように鳴り響いている。 『今すぐご自のメインバンクの残と、くなられたお父様の遺産分割協議をご確認いただけますか?』
の窓でキャッシュカードと分証を提示し、過分の詳細な入細の示を請求した。 数分、械から吐きされた数枚に及ぶ取引履歴の帳票。 窓の女性員からそれを受け取り、ロビーの片隅の革子に腰掛けた織は、老鏡をかけるようにして数字の羅列に目を凝らした。
「……何よ、これ……」
声が震えた。 織が常の活費決済用に使っていた座ではない。