"「飯抜き」と言われたので、夫との生活を全部やめました" 第10話
と罵られ、玄関のたい敷ので啜り泣く々を送っていた。
数、実の郵便受けに、裁判所からの最終執通とともに、柴田弁護士の事務所からの通の面が届いた。
と建物の競売落札が決定し、落札代のから、綾野が公正証で設定していた債権額——慰謝料百万円と替百万円の全額が、優先に綾野の指定座へと完済されたという事務連絡だった。
残った僅かな配当はすべて第順位の融業者に吸いげられ、修造たちのもとには円も残らなかった。来末をもって、は全員、このみ慣れたから退しなければならない。
「終わりだ……全部、終わりだ……」
居の畳に崩れ落ちた修造の嗚咽と、狂乱状態で叫び散らす登紀子の切り声が、夕暮れの暗いに霊していた。裕介はただ、だらけの自分の両を虚ろに見つめることしかできなかった。
同じ頃、都のオフィスを見ろす層タワーのラウンジで、綾野はクライアントであるIT企業の役員と打ちわせを終えたところだった。
「彩さん、ご提案いただいた法向けの福利プランと確定拠の設計、取締役会で満致で決されましたよ。さすが、現の実と数字の裏付けが完璧ですね」
「ありがとうございます、田所常務。
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従業員の皆様の、の活を第に考えてシミュレーションを組み直しました。ご期待に沿えるよう、今の運用サポートも責任を持って担当させていただきます」
名刺を交わし、々と礼して相を見送った綾野の取りは、どこまでも軽やかだった。
彼女の胸元には、先格した最位コンサルタント資格のバッジが、控えめに、しかし確かな輝きを放っている。支社での実績が認められ、来期からは設される資産形成コンサルティング部のリーダーへの昇格も内定していた。
スマートフォンの画面をくと、柴田弁護士からいメッセージが届いていた。
『の産競売続きがすべて完し、請求していた慰謝料および清算、計百万円の入を確認いたしました。これにて、私どもが受任したすべての法続きは終となります。本当にお疲れ様でした』
画面を見つめたまま、綾野はふっと息を漏らした。
かった悪が、法と現実の数字の力によって、完全に幕をろした瞬だった。
元に戻ってきた資は、すべて綾野自の血と汗の結晶であり、彼女が自分のを取り戻すために戦い抜いた証だった。元夫やその族が今どうなっているのか、どこでどんな惨めな暮らしをしているのか、今の綾野にはる由もないし、る必もなかった。
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のに寄し、の尊厳を奪うことでしか自尊を保てなかったたちの末など、彼女の界に入る価値すら残されていない。
夕暮れ、綾野はいつものきつけのティーサロンへち寄った。
窓際の特等席に座り、お気に入りのダージリンのセカンドフラッシュを注文する。のポットから注がれた琥珀の液体から、甘く芳醇なマスカテルフレーバーの湯気がちる。
カップを元へ運び、ゆっくりと喉を潤す。
雑音のない静寂。 自分のでち、自分の力で掴み取った確かな常。
かつて、暗い卓で「飯抜き」を宣告され、凍えるような恐怖と理尽に震えていたあの夜の自分に、今の綾野なら胸を張って言ってあげられる。
——恐れずに、を向きなさい。 ——理尽な鎖は、あなたので必ず断ち切ることができるから。
「ふふっ……」
わず元から零れた微笑みは、誰のためでもない、自分自への祝福だった。
ガラス窓の向こうには、夜の帳がりた京のが、宝箱をひっくり返したようなのとなって広がっていた。
誰の指図も受けない。 誰の嫌も気にしない。
どこまでも澄み切ったの夜空の、綾野はカップを置き、しいへ向かって、凛とした差しで歩きしていった。