"三日待て――命を懸けて起爆盤を粉砕した現場主任、120人を救い500億の黄金を暴く" 第6話
審判者の音
資材倉庫のえ切ったに座り込んでから、あまりが過ぎていた。
寒さで指先の覚が麻痺し始めた頃、から複数の慌ただしい音がづいてきた。錆びついた掛けがされ、京錠がされる甲い音が響く。
ギギィと軋む音をてて鉄扉がいた。逆のにっていたのは、作業を目に被った藤本栄作と、総務課の事務員だった。
「誠、ろ。解放だ」 藤本はく告げると、酒井の脇を抱えるようにしてちがらせた。差しされたコップから、温かい緑茶の湯気がちっている。かじかんだでそれを受け取ると、がじんわりと掌から全へ染み渡っていった。
「藤本さん……監督は?」 「事務所で青い顔して縮こまっとるよ」 藤本はスマートフォンをポケットから取りし、画面を酒井に見せた。そこには、が資材倉庫の鉄扉に京錠を掛け、鍵をポケットにねじり込む瞬が、鮮な画として記録されていた。
「本社の保推部へ直談判したんだ。『現監督が作業員を暴し、違法に監禁している』ってな。この画と防犯カメラのタイムスタンプを添付して総務のホットラインへ投げ込んでやったら、京のコンプライアンスが蜂の巣をつついたような騒ぎになった。宛てに役員から直が入って、『今すぐ鍵をけろ、これ以問題をきくするな』と鳴りつけられたわけだ」
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藤本は酒井の肩に目を落とした。 「腕、がらんのか」 「し痛みます」 「町の県病院の救急へけ。総務のを使わせる。診断をきっちり取っておくんだ。全治何週とかれたが枚あるだけで、警察が入ったの威力は何倍にもねがる」
病院でされた診断は『肩関節挫傷、ならびに腕部打撲症。全治週の加療をす』というものだった。湿布と角巾で固定された腕のみをじながら、酒井は病院の公衆話から自宅へダイヤルした。
数秒の呼びし音の、受話器から妻・佳恵の落ち着いた声が聞こえてきた。
「はい、酒井です」
「……佳恵か。俺だ」
「誠さん? どうしたの、こんなに。何かあったの?」
酒井は息をえ、事実だけをに伝えた。発破を止めるために会社の械を壊したこと。業務からされ、損害賠償や解雇の対象になる能性があること。
受話器の向こうで、い沈黙が流れた。秒、秒。臓が鐘のように打つ。族にどれほどのと迷惑をかけることになるのか、その罪悪が酒井の喉を締め付けた。
やがて、佳恵の静かで、だが点の揺らぎもない声が返ってきた。 「……あなた、で度でも、いい加減な気持ちでに入ったことあった?」 「……ない」 「なら、そのが危なかったんでしょう? あなたがハンマーを振るまでして止めたんだから、撃ったら誰かがんでたんでしょう? ……あなたが殺しにならずに済んだなら、それで分です。
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活のことはどうにでもなるわ。帰ってきたら、温かいご飯を作るから。ちゃんと話を聞かせてね」
受話器を置いた瞬、酒井の目からいものが溢れそうになった。職を失う恐怖も、法な追及へのも、その言ですべて消えった。守るべきものが定まったのには、もう迷いはなかった。
翌朝、午。 がちらつき始めた黒事業所の正に、黒塗りの社用が滑り込んできた。 りったのは、京本社の保推部・野謙吾だった。歳。鉱保監督官の資格を持ち、現の正や隠蔽に対して切の容赦をしないことで社内にれ渡っている男だ。仕ての良いコートのには、で擦り切れた全靴を履いていた。
事務所のドアがき、野が入ってきた瞬、そのの空気が絶対零度まで凍りついた。
が揉みをしながら擦り寄る。
「野部! ご労いただき恐縮です! 例の酒井という男の器物損壊事件につきましては、すでに署への被害届も作成しておりまして――」
野はを完全に無し、のついた全靴で会議へ直した。 「監督、個の処分や警察汰の議論はだ。私が京からんできたのは、第区画のがきているかんでいるかを確認するためだ。直ヶのガス検データ、報原本、ならびに今朝の測定記録をすべて机にしなさい」
切のを交えない、氷のような宣告だった。