"三日待て――命を懸けて起爆盤を粉砕した現場主任、120人を救い500億の黄金を暴く" 第5話
暗黒の資材庫
破壊された子起爆装置の残骸から、焦げ付いたシリコンと硝煙の混じりった刺激臭が濛々とちっていた。
待避壕のコンクリート壁に背を叩きつけられた酒井誠は、肩にる激痛に奥歯を噛み締めながら、荒い息を吐いていた。目のでは、現監督の雅史が額に青筋を浮きたせ、鬼のような形相で唾を撒き散らしている。
「こいつを押さえろ! 会社の設備を故に叩き壊した現犯だ! 何突っってんだ、く捕まえろ!」
の切り声に気圧され、駆け込んできたの若作業員が怯えながら酒井の腕を取り、ろにねじりげた。酒井はじろぎつせず、切の抵抗を示さなかった。々に砕け散り、の砂利に散らばった黄いプラスチックの破片と、引き千切れた線の束を、ただ静かに見ろす。
「監督、をさせろ!」 声をげて待避壕へ踏み込んできたのは、掘班の藤本栄作だった。藤本は酒井の腕を掴むの若を太い腕で引に引き剥がし、のにちはだかった。 「器物損壊だろうが何だろうが、現監督に作業員を私刑にかける権限なんぞあるわけがねえだろうが!」
「うるさい! 逃の恐れがある現犯だ!」 は藤本の胸板を突きばそうとしたが、百戦錬磨の老の体はびくともしなかった。
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はいっそう目を吊りげ、唾をばした。 「警察を呼ぶ! 本社の事と法務にも今すぐ通報だ! それまでこの狂を資材倉庫へ放り込んで鍵をかけておけ! 歩もへすな!」
「藤本さん、いいです」 酒井はく、落ち着いた声で割って入った。肩の関節がズキズキと脈打っていたが、声のトーンだけは決して乱さなかった。 「私は逃げません。警察の聴取でも会社の査問でも、すべて堂々と受けます。……藤本さん、ただつだけ頼みます。本社の保推部へ送った緊急報告の受付番号、あれだけは消されないよう元の控えを残してください」
「……分かっとる。任せとけ」 藤本は苦渋に満ちた顔で頷き、酒井の背をそっと支えた。
連されたのは、坑からメートルほどれた斜面に建つ、波板トタン張りの古いプレハブ資材倉庫だった。い鉄扉が乱暴に押しけられ、酒井は暗いへ押し込まれた。には削岩用の予備ビットや油まみれの油圧ホース、ワイヤーロープが無秩序に積まれている。
背で『バタン』と暴力な衝撃音が響き、から『ガチャリ、ガタガタ』と、頑丈なU字京錠が掛けにろされるたい属音が響いた。
「そこでをやしてろ! 貴様の退職なんぞ、この起爆装置の弁償と期遅延の損害賠償で円も残らんとえ!」
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の罵声が鉄扉越しに響き、やがてざかっていく。
倉庫のは、井の隙から差し込むわずかな漏れを除いて、いに包まれていた。え切ったコンクリートの気が作業のズボンを伝っていがってくる。
酒井はの箱に腰をろすと、震える指先で胸ポケットから『現全作業ノート』を取りした。首を擦りながら、鉛をらせる。
、午分。 第区画発破作業、起爆装置操作部破損により物理に制止。 監督の指示により資材倉庫内へ隔・施錠拘束。 肩関節打撲、関節捻挫。受傷原因:監督による体接触及び壁面への押し付け。
事実だけを淡々とき連ねる。りや悔しさをインクに乗せれば、それは単なる愚痴になり、証拠としての価値を失ってしまう。の現活で、酒井はその酷な現実を誰よりも学んでいた。
分ほど経った頃、倉庫のい壁のすぐで、が苛ちを爆発させながら話で鳴り散らす声が聞こえてきた。回線のトランシーバーを使っているらしく、相の声までは判別できないが、の叫びはに取るように分かった。
「……だから! 今の午に撃つはずだった第区画がんだんだよ! ……代わりの起爆盤だ! 予備がか仙台の材センターにあるだろうが! 今すぐチャーター便でらせろ! ……何だと!? 備点検記録の確認と、コンデンサーの通試験を済ませてからじゃないと庫できない規定だと!? 融通を利かせろ、俺の査定がかかってるんだ! ……最でいつ着く! の夕方!? ……ふざけるな! 点検して現で使えるようになるのは、目の朝番じゃないか!」
ガチャン、とプラスチックの筐体を面に投げつけるような音がした。
暗の、酒井は息を呑んだ。
胸の奥で、カチリと歯が噛みう音が聞こえた気がした。
――。
昨夜、暗ので見たあの黒蛇が求めた。そして今、自分がキロの鉄槌を振りろして引に作りした空。 そのつが、狂いもなく『』という点で完全になりっていた。
偶然だと笑うことは簡単だ。だが、と向きい続けてきた職にとって、それは単なる偶然では片付けられない、自然がに与えた最の猶予のようにえてならなかった。
酒井は帳の余に、震えるで最のをきした。 『猶予は。このを、ただ待つにしてはならない。が何を隠しているのかを暴くにしなければならない』