"今日でクビだ」黒蛇の夢を信じて280万円の起爆装置を壊した俺。3日後、127人が退避した直後――山が崩れた" 第5話
署名のない起爆
「その鍵を抜いてください」
私が言っても、監督はを止めなかった。
発破器の接続に鍵が入る。次に母線をつなぎ、坑内の全員が退避したことを確認すれば、装置は起爆能な状態になる。
今なら、まだにう。
「太田、母線を接続しろ」
「できません」
太田は透ケースに入れた確認表を監督のへ向けた。
「発破主任の確認欄は空です。ガス警報の原因も確認できていません」
「主任にしたのは私だ。従えないなら、おもす」
「それでも押せません」
太田の声はさかったが、今度は震えていなかった。
監督は彼を押しのけ、壁に掛けてあった母線を自分で取った。藤本班がすぐにそのへる。
「監督。発破作業は、経験のないが1でめていいものじゃない」
「監督者の資格なら持っている」
「資格の話をしているんじゃない。確認が終わっていないと言っている」
監督は返事をせず、母線の端を発破器へづけた。
私は扉の脇にある非常連絡用の話を取った。事務所へかけ、保報告の状態を確認する。
「受付番号KT-4072です。本社から止判断はていますか」
話の向こうでキーボードを打つ音がした。
『まだ“原記録照会”です。現判断についての回答はありません』
「起爆準備が始まっています。至急、保部へ伝えてください」
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『分かりました』
話を戻した、監督は母線の保護キャップをしていた。
「正式な回答はまだだろ」
「だから待つべきです」
「止命令がないなら、予定通りめるのが現責任者の仕事だ」
「異常がないと確認できていないのに、なぜ“める”方だけを選ぶんです」
「今止めれば、次の搬も選鉱程も全部ずれる。2400万円どころでは済まなくなる」
監督は母線を接続へ差し込もうとした。
藤本班がその首をつかんだ。
「せ」
「つなぐなら、俺をしてからにしろ」
2の腕が押しう。狭い起爆所で揉みえば、別の事故を起こしかねない。
「藤本さん、をしてください」
私が言うと、彼は驚いたようにこちらを見た。
「誠、こいつは本気だぞ」
「分かっています。でも、ここで怪をしたら、問題がすり替わります」
藤本班は歯をいしばり、ゆっくりをした。
監督は乱れた袖を直した。
「話の分かるふりをしても無駄だ。おが現を混乱させた記録は残っている。発破が終われば、本社に正式な解雇を求める」
「設備も仕事も失う覚悟はあります」
にした瞬、妻から届いたメッセージがをよぎった。
今夜、何に帰れそう?
45歳で鉱を辞めれば、同じ収入の仕事をすぐ見つけられるとはえない。宅ローンはあと9残っている。妻に何も相談せず、活そのものを変える決断をしていいのかという迷いもあった。
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それでも、確認していない全を“確認済み”にはできなかった。
「ですが、命を失う覚悟まで、127に勝にさせることはできません」
「げさなんだよ」
監督は母線をつなごうと、再びを伸ばした。
私は属台の横へ移し、発破器の接続レバーを押さえた。
「をどけろ」
「本社の判断がるまでです」
「どけ!」
監督が私の肩を突いた。背が壁へ当たり、作業灯が揺れた。
太田がに入る。
「監督、やめてください」
「おは黙っていろ。私が責任を取ると言っている」
「責任という言葉では、爆発したのは戻りません」
私がちがると、監督はたく笑った。
「にてきた蛇が、そこまで教えてくれたのか?」
「違います」
私は黒い帳をいた。
「同じ点で2回た警報。増えた湧。変わった岩の反響。報から抜かれた原記録。それが止めろと言っています」
「全部、おに都よく並べただけだ」
監督は太田を押しのけ、母線をつかんだ。
私は起爆所の壁際を見た。
緊急補修用の具箱が置かれている。蓋をけると、レンチや絶縁具のに、柄のいハンマーが入っていた。
発破器はまだ母線につながっていない。内部に起爆用の源はあるが、この状態で本体を壊しても坑内の管へ気は流れない。
私はそれを確認してから、ハンマーを持ちげた。
「酒井。何をするつもりだ」
監督のが、初めて母線かられた。
私は答えず、発破器の正面にった。