"100人宴会を潰した義妹に、店主の私が請求書を出した日" 第9話
「融関の職員にとって、もっとも致命なのは何かね? 正そのものだけでなく、内の祥事に引きずられて倫理観を失い、保のために隠蔽作にる脆さだ。君のそのは、信の社会信用を著しく失墜させた」
された処分は、営業部からの即更迭、ならびに本部総務部付での自宅待命令だった。事実の世からの脱落であり、懲戒解雇を免れるための自主退職勧告に等しい通告だった。
方、藤本の実でも、凄まじい殻変が起きていた。
母親の松代は、親族に「菜緒さんがリエをいじめている」と触れ回っていた、今度は親戚から「娘を犯罪者にした毒親」「息子の嫁のを潰そうとした破廉恥な」と袋叩きに遭っていた。親族会が招集され、老格の伯父から「これ以族の恥を晒すなら、藤本の系から親子の名を抹消する」と鳴りつけられた松代は、労で寝込んでしまった。
助成の返還万円、着の返還万円、そして魚への損害賠償万千円。総額百万円を超える負債が、瞬にしてリエの双肩にのしかかった。
リエが勤めていた元の産会社にも、同窓会の噂は瞬くに広まっていた。「同窓会で横領をやらかして警察汰寸になった社員がいる」という話は、顧客の資産を預かる産業界において致命だった。
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リエは社内で完全に孤し、司から退職届の提を促されることとなった。
自らが蒔いた嘘の種が、自らの社会命を根こそぎ刈り取っていく。
の善と労働をタダ飯のように貪りってきた傲なのツケが、括請求となって彼女のに叩きつけられていた。
曜の午、菜緒は顧問弁護士の事務所の応接にいた。
テーブルを挟んで向かいっているのは、自宅待を命じられて無精髭を伸ばした夫の健だった。仕ての良いスーツはしわだらけで、ネクタイは曲がり、線は机の目に張り付いたままかない。
机のには、弁護士によって作成された公正証の原案が置かれていた。
第条:藤本健は、藤本菜緒が所・経営する「魚」の舗敷、建物、営業権に関する切の権利主張を放棄し、経営への介入を永久にわないこと。 第条:健の個定期預より、リエの引き起こした連の騒に伴う舗の信用毀損補填、ならびに別居に伴う清算として、百万円を菜緒に支払うこと。 第条:本付での協議婚の成。
「……なお、婚だけは、考え直してくれないか」
健は縋り付くように両を机に伸ばした。その指先はけなく震えていた。
「俺が悪かった。リエのことも、お袋のことも、全部縁を切るから。
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の伝いだって、休みのは朝から晩まで何だってやる。信も辞めて、おのの皿洗いからやり直す。頼むから……やり直してくれ」
菜緒は夫の元を見つめ、静かに、しかし断固として首を横に振った。
「健さん。あなたが今すがっているのは、私へのじゃないわ。職を失い、世体を失い、親族から孤した自分が、かつて見していた『魚』という全な港に逃げ込みたいだけよ」
「そんなことない! 俺はおをして——」
「しているが、夜にの庫から契約を盗みして、ライターで燃やそうとするの?」
菜緒の徹な言が、健の言葉を完璧に砕した。
「あなたは、ずっとそうだった。私が理尽をみ込んでをげれば、庭が丸く収まるとい込んでいた。私の労働も、の簾も、あなたの内に対する見栄の具に過ぎなかったのよ。……私はもう、誰かの見栄のために自分のをすり減らすつもりはありません」
「なお……」
「健さん、あなたは度も、私の方になってくれなかった。私が百分の料理をにしてち尽くしていた曜の夜、あなたが番に配したのは、妹のと親戚の目だけだった。その点で、私たちの夫婦関係は完全にんでいたのよ」
健は言葉を失い、両で顔を覆って突っ伏した。肩が激しく波打ち、呻き声のような嗚咽が漏れる。
弁護士から渡された万を握る健のは、止まることなく震えていた。