"100人宴会を潰した義妹に、店主の私が請求書を出した日" 第6話
氷のように澄んだ声が、を切り裂いた。
「うわっ!?」
健は鳴をげ、ライターを取り落とした。が畳に燃え移るに、菜緒が素く踏み込み、スリッパの底で踏み消した。健のから滑り落ちた契約の原本を、菜緒は屈んで拾いげた。
「な、なお……お、起きてたのか……」
健の顔はのように蒼だった。額から脂汗が滝のように流れ落ち、唇が震えている。
「燃やすつもりだったのね。リエがサインした、この唯の証拠を」
「ち、違うんだ! 俺は……あいつが警察に突きされたら、俺の信の仕事だってクビになるんだよ! 頼むから見逃してくれ! 助成の万だって、俺が信から借して穴埋めするから!」
「あなたが穴埋めする? どうやって?」
菜緒は夫の目を、徹に見据えた。
「さんから全部聞いたわ。助成の正受、牛よしからのキャッシュバック。あなた、どこまでっていたの?」
健はに膝をつき、を抱えて激しく嗚咽した。
「……らなかったんだ! 角印を貸してくれって頼まれたは、『同窓会の記品代の協賛がしるから』って言われただけで……まさかあんなを着してたなんて……! 信じてくれ、なお!」
「信じる? 度でも私を信じてくれたことのないあなたを、どうやって信じるの?」
菜緒が契約を胸元に抱きしめ、背を向けようとしたそのだった。
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夜の静寂を破り、の固定話のベルがけたたましく鳴り響いた。
午140分。こんなに誰が。
菜緒が警戒しながら受話器を取ると、話の主は、かつてないほど取り乱した板のだった。
『女将さん! 変だ! 今、の仲買の連から緊急の連絡が入った!』
「さん、どうしたの!?」
『保健所ですよ! 「魚の仕入れに正があり、無許の毒魚が混入している」って、同窓会の幹事会を名乗る物から保健所の当直窓に匿名の通報が入ったらしいんです! の朝で、ち入り検査が入るって……!』
菜緒の全の血が、瞬で沸騰した。
リエだ。
追い詰められたリエが、自らの正を隠蔽するために、先を打って保健所に虚偽の通報を叩き込み、を制休業に追い込もうとしたのだ。
、曜の朝。
保健所の監査官が乗り込んできた、もし抹の備でもあれば、は営業止処分を受け、の信用は完全に消滅する。
元にあるのは、燃やされかけた契約。目のには、保のために証拠隠滅を図った裏切りの夫。そして数に迫る、政による制査察。
菜緒は受話器をく握りしめ、を見据えた。絶体絶命の包囲網ので、代目主の瞳に、静かな、しかし決して消えることのない反撃の炎が灯っていた。
曜の夜けは、いに覆われていた。
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午6。鉛の空からり注ぐたいが、換気扇のステンレスダクトを湿らせ、乾いたアスファルトに黒い染みを作っていく。
「魚」の勝をくぐった菜緒は、に袖を通すなり、徹夜で厨のを磨きげていたと向きった。の目のには赤黒い隈が浮かび、ゴム靴には次亜塩素酸ナトリウムのっぽい沫が点々と付着していた。換気扇の回る音だけがく唸りをげている。
「さん、仕入れ台帳と産証、検査済証をすべてしてください。の卸から届いた算伝票、直ヶ分を帳のカウンターに並べます」
「女将さん、本当に丈夫なんですかい……? 毒魚の混入なんて、根も葉もねえ言いがかりだとしても、度『疑いあり』で査察に入られちまえば、所の目ってものがありますぜ。の連もすでに噂を聞きつけて、うちへの卸を警戒し始めてるって話だ」
「事実だけを提示します。嘘で組まれた壁は、突つけば音をてて崩れますから」
菜緒は厨のステンレス台を指先でなぞった。指紋ひとつない、鏡のように磨かれた鋼板。父の繁蔵がを酸っぱくして叩き込んできた「まな板を見ればそのの腹の内がわかる」という教えが、今この極限の状況において、最の防壁となっていた。
午830分。
の正面玄関の引き戸が激しくノックされた。
錠した菜緒のにっていたのは、紺の腕章を巻いた保健所活課の査察官名と、所轄署の活全課から派遣された私の捜査員だった。