"離婚した元夫は、私の再婚相手を知らない" 第4話
に及ぶ冠脈バイパス術を無事に終え、ICUでの術管理指示をし終えた私がを脱いで来棟のエントランスをただった。
たいの黄昏。 病院の救急搬送の脇、植え込みのに、自然なほど周囲を警戒しながらち尽くすの男の姿があった。 黒いヨレたウィンドブレーカーに、く被ったキャップ。 だが、その隙から覗く浅黒い肌と鋭いは、紛れもなく「現の刑事」のものだった。
「……(きむら)さん?」
私が声をかけると、その男はビクッと肩をねがらせ、脱兎のごとく周囲を見回してから、りに私へ駆け寄ってきた。
亮平(きむら・りょうへい)、歳。 達也と同じ県警本部捜査課犯係の巡査部。かつて達也が自宅に若刑事たちを呼びつけて酒盛りをいた際、唯酔せず、片付けを伝いながら「奥さん、いつも達也先輩の無茶に付きってくださってすみません」とをげていた、実直で真面目な男だった。
「美央先……! 突然押し掛けて、本当に申し訳ありません!」 刑事の声は、微かに震えていた。その額には、季節れのや汗が滲んでいる。
「さん、どうしたの? そんなところで……」
「先、ここではまずいです。どこか、誰もいない所でお話しさせてください。……達也先輩の……いえ、県警内部の、な正に関わる話なんです」
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張り詰めた空気。私は事態の異常さを即座に察し、病院から区画れた、平の夕暮れは客の途絶える雑居ビルの喫茶へと彼を案内した。
番奥のボックス席。 運ばれてきたアメリカンコーヒーからちる湯気をにしても、刑事は両を膝ので固く握りしめたまま、微だにしなかった。
「先。……昨、達也先輩と正式に婚されたと、係の連から聞きました」
「ええ。昨の午のことよ」
「……あいつは、のクズです」 刑事が奥歯をギリリと噛み鳴らした。その瞳に、燃えるような憤の炎が宿る。
「先がどれだけあいつを支えていたか、俺たち輩はみんなっていました。それなのにあいつは、本の女に貢ぐために……警察官としての魂まで売り払ったんです」
「さん。単刀直入に教えて。何が起きているの?」
刑事は周囲に客がいないことをもう度確認すると、を乗りし、掠れた声で囁いた。
「達也先輩は……捜査費を横領しています。それも、何百万というレベルじゃない。ここの累計で、千万円を軽く超えています」
臓の鼓が、トクンと段くねた。 私が抱いていた漠然とした疑――公用の私利用や自然な領収――その遥かをく、組織な巨額横領。
「あいつは特捜本部の『内偵捜査官』というを悪用し、暴力団の資源調査と称して、偽造した報提供者(エス)との接触費用を毎百万円以請求していました。
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偽造領収を作成し、公用である捜査用覆面パトカーをとのドライブや温泉旅に乗り回し、ETCの公費精算カードで速代を浮かせ、その浮いたをすべてあの女との豪遊に注ぎ込んでいたんです」
私は先ほどスマートフォンで受信した、ホテルのレシートの画像をいした。 点と点が、恐ろしい精度で結びついていく。
「さん。……なぜ、それを層部に告発しなかったの?」
私の問いに、刑事の顔が苦渋に歪んだ。
「告発したんです! 先週、証拠の記録のコピーを持って、直属の課――捜査課の原(おおかわら)警に直訴しました! ……ですが」
刑事は震えるで、自らの胸元を掴んだ。
「課は、そので俺の持っていった類をシュレッダーに放り込みました。そして、こう言ったんです。『。来、矢野は警部に昇することが内定している。この期に犯係から祥事をせば、俺の世にも傷がつく。……これ以内を嗅ぎ回るなら、おを能登半島の駐所へばすぞ』と」
警察組織の暗部。 内の祥事を徹底に隠蔽し、保のために正義を踏みにじる腐敗の連鎖。 達也がなぜ、あれほどまでに尊に振るい、婚調のでも気にられたのか。 その背には、彼を守り、正をもみ消してくれる直属の司という固な防壁がしていたからだった。