"無能教師と呼ばれた僕が、AIで教室を取り戻すまで" 第2話
「あ……朝倉先。申し訳ありません、集計表、今すぐ仕げますから……」
「いいえ、いいんですよ。……私、さっきはし言い過ぎてしまいました。ごめんなさいね」 朝倉は屈み込み、野寺の机のの乱雑な類を甲斐甲斐しくえ始めた。
「野寺先が懸命なのは、私、ちゃんと分かっていますから。ただ、領の掴み方がし苦なだけですよね。……実は、さっき教先から、来週の修学旅の最終しおりの原稿、今週に印刷所へ回すようにって厳しく言われていたでしょう?」
「えっ……はい。組の独自ページが、まだの状態でして……」
「ふふ、やっぱり。先から言いつかった別の調査物も溜まっているんでしょう? ……いいわ、野寺先。その修学旅のしおり類、私が代わりに引き受けてあげる」
「え!? い、いや、それは申し訳なさすぎます! 学主任の朝倉先はお忙しいのに、そんなことまで――」
「いいから、いいから!」 朝倉は野寺のから、プリントの束を優しく、だが断固とした力加減で抜き取った。
「困ったはお互い様です。野寺先に倒れられたら、学全体が困るんですから。……これは私からのお詫び。来週曜の締め切りまでに、私が完璧に仕げて印刷に回しておきますね。だから先は、先の仕事を優先してください」
「朝倉先……本当に、ありがとうございます。
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何とお礼を言ったらいいか……」
野寺は子からちがり、何度もをげた。 朝倉は使のような笑みを浮かべて頷き、類を抱えて自席へと戻っていった。 職員の同僚たちがその様子を見て、「朝倉先は本当に聖母だな」「あんな無能の面倒まで見てやって」と声で囁きっている。
野寺は胸のすくいで、自席のパソコンに向き直った。 朝倉先は厳しいけれど、本当は自分のことを番気遣ってくれている理解者なのだ――そう信じて疑わなかった。
そのの夕方。 放課の静まり返った体育館の裏。自販で缶コーヒーを買っていた野寺の背から、く鋭い関弁がんできた。
「……おい、野寺。あんた、ええ加減に目を覚ましたほうがええで」
体育科の桜(さくらぎ)だった。 ジャージ姿の無骨な男で、普段は職員の政治な派閥争いには切加わらない孤のベテラン教員だった。
「桜先……? 何のことですか?」
桜はくわえ煙にを点け、煙を吐きしながら野寺を睨み据えた。 「朝倉のことや。……あいつにだけは、絶対に背見せたらあかん。あいつと関わって、まともな目に遭うた、この学にもおらへんぞ」
「やめてください!」 野寺は珍しく声を荒げた。
「朝倉先は、僕のために修学旅のしおり作りまで肩代わりしてくれたんです! 僕が至らないせいで迷惑をかけているのに、そんな悪みたいな言い方……あんまりです!」
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桜は細めた目で野寺の顔をじっと見つめ、吐き捨てるように呟いた。 「……アホやな。底抜けのアホや、おは」
桜はそれ以何も言わず、吸い殻を携帯皿にねじ込むと、踵を返してっていった。 野寺はめ切った缶コーヒーを握りしめ、言いようのない苛ちを胸の奥に燻らせていた。
放課の舎。 部活の掛け声や吹奏楽部の管楽器の音がくから響く、野寺は誰もいない教の見回りをしていた。 階の端、準備のの暗い階段の踊り。 そこに、膝を抱えて座り込んでいるの男子徒の姿があった。
組の徒・佐々(ささき・だいち)だった。
は入学当初から周囲のグループと距を置き、教では常に机に突っ伏して眠ったふりをしていた。派なカースト位の徒たちからは骨に無され、かといってしいグループにも属せない、クラスの完全な孤分子だった。
「佐々君……まだ残っていたのかい?」 野寺がそっと声をかけると、は髪の隙から野寺を睨みつけ、舌打ちをした。
「……ほっといてくれよ」
「来週からの修学旅、班の希望表がていなかったから配していたんだ。……何か、困っていることはないかい?」
「関係ないだろ。どうせあんたに言ったって、何も変わらないんだから」
はちがり、肩をらせてちろうとした。