"無能教師と呼ばれた僕が、AIで教室を取り戻すまで" 第1話
「……えっと、皆さん。来週からは、待ちに待った修学旅ですので……健康管理には、分に気をつけてください」
初の湿った空気が淀む、県楠ノ組の教。 教壇につ野寺啓介(おのでら・けいすけ)は、チョークのでくなった指先を落ち着かなさそうに擦りわせながら、掠れた声で告げた。歳。採用目の国語科教員。真面目だけが取り柄の痩せ型で、おろしたての物スーツの肩には、すでに自信のなさが染み付いている。
返ってきたのは、徒たちの酷な嘲笑だった。
「先ー、声さすぎてマジで聞こえませーん」 教央の席で、スマートフォンの画面から目をさずに男子徒がで笑った。
「てかさ、このクラスだけ報の伝達が遅すぎない? 組も組も、もう自由の班決め終わってホテルの部割りも提してるんですけど。うちのクラス、まだ程表のプリントすら配られてないよね」 窓際の女子徒が、聞こえよがしにため息を吐きす。周囲の徒たちが同調してクスクスと肩を揺らした。
「あ……すみません。プリントの印刷が、その……し遅れていまして」 野寺は反射にをげた。教壇ので々と腰を折る担任の姿に、教の空気はさらに弛緩し、侮蔑のを濃くしていく。
「野寺先、言い訳はいいからく授業入ってくださいよ。
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ただでさえ度遅れてんだからさ」 「あ、はい。では、今は教科の……えっと、何ページからだったかな」
野寺がおぼつかないつきで指導案をめくると、最列の徒が骨に机をペンで叩いた。 「あとさ、先が返却した先週の現代文のテスト、配点と模範解答が箇所も違ってたんだけど。マジで仕事できなさすぎでしょ。の先に文句言ったら、職員でも笑われてたよ」
「……すみません。それも、採点基準の確認で……の先方からも、厳しくご指導を受けました」
教に、ドッと品な笑い声が広がった。 徒から侮られ、同僚からは無能と切り捨てられ、職員のヒエラルキーの最底辺をいずる男。それが、組の担任・野寺啓介の偽らざる常だった。
キンコンカンコン、と終業を告げるチャイムが鳴り響いた瞬、野寺は逃げるように教壇をにした。 廊にた途端、肺に溜まっていた苦しい酸素をすべて吐きすように、くい溜め息がこぼれ落ちる。
「……はあ。どうして、こうくいかないんだろうな」
職員へ戻る渡り廊。野寺のに、階段の踊りから鋭くたい女性の声がび込んできた。
「あの、野寺先。朝頼んでおいた希望調査の集計表、まだがってきてないんですか?」
振り返ると、そこにっていたのは学主任の朝倉美鈴(あさくら・みすず)だった。
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代半ば。完璧に着こなしたグレーのパンツスーツに、縁の鏡。県内の学から鳴り物入りで赴任してきた実力派で、の信任もい「仕事のできるエリート教員」のだった。
「あ、朝倉先……すみません。午の授業準備に追われていて、まだ集計の途――」
「はあ……」 朝倉は眉根を寄せ、これ見よがしにきな溜め息を野寺の顔へ吹きかけた。 「なんでそんなに仕事が遅いんですか? 簡単なエクセルの集計でしょう。採用の講師でもで終わらせますよ。……あなた、本当に教員としての適性、あるとってらっしゃるの?」
徹な侮蔑の差し。 野寺の喉の奥が乾き、唇が刻みに震え始めた。
職員の角。野寺のデスクの周囲だけ、類のと段ボール箱が無秩序に積みげられていた。 自分の仕事が遅いのは事実だ。領が悪く、徒ひとりの作文に丁寧すぎるコメントをき込み、器用な徒の相談に何も付きってしまう。その結果、事務処理が夜までズレ込み、類の備で毎のように管理職から叱責される悪循環に陥っていた。
「野寺先、丈夫ですか?」
パソコンの画面を凝して固まっていた野寺の横から、ふわりと柔らかいと柔剤の匂いが漂ってきた。 朝倉美鈴だった。 先ほど廊でたく切り捨ててきたとは打って変わり、その瞳には困惑と慈が浮かんでいる。