"援助し続けた兄が隠していた二年間" 第7話
「違う。兄ちゃんが自分で追い込んだんだ」
言った瞬、胸が痛んだ。
それでも撤回しなかった。
話を切った。
美咲はしばらく何も言わなかった。
「ごめん」
「何が?」
「連絡先ってるの、俺がに教えたから」
「それはいいよ」
美咲はスマートフォンを伏せた。
「でも、これで分かった」
「何が?」
「健司さん、まだ“誰かが最に払う”ってってる」
私も同じことをじていた。
兄は困っている。
それは事実だ。
借も本物だ。
でも今の兄が求めているのは、て直す方法ではない。
今だけ支払いを先送りするだった。
そして翌。
兄は私に連絡せず、柴田のところへった。
を返すためではなかった。
さらにか待ってくれと頼むためだった。
柴田は初めて断った。
そこから、兄の借は本当にき始めた。
柴田から返済を迫られた兄は、まず腕計を売った。
その次に、以乗っていた型バイクの部品を処分した。事故はほとんど乗っていなかったものの、「いつか完全にが戻ったらまた乗る」と保管していたらしい。
消費者融の返済も遅れ始めた。
勤務先へ話が来たわけではないが、兄は精神に追い詰められ、遅刻が増えた。
それでもパチンコは完全にはやめられなかった。
「もうってない」
そう言っていた翌週。
柴田がの駐で兄のを見つけた。
私は聞いても、以のようには驚かなかった。
広告
依というものは、嘘がばれた翌にを別へ変えるわけではない。
兄が本当に変わるには、私が見張ることでも、説教することでもなく、自分で止める理由を持たなければならないのだとい始めていた。
そんな頃。
兄から珍しく、以の話が来た。
「直」
声がかった。
「何」
「会社、休んだ」
「体調悪い?」
「違う」
しばらく沈黙。
「朝、会社く途でパチンコに入った」
私は何も言わなかった。
「万円だけのつもりだった」
兄は続けた。
「負けて、もう万ろした。それでも取り返せなくて……昼過ぎになって会社から話来た」
無断欠勤になった。
司から厳しく注され、次があれば処分もあると言われたという。
「どうしたらいい」
初めてだった。
「いくら貸して」ではなかった。
「どうしたらいい」と聞いた。
私は答えた。
「休み取れる?」
「何で」
「相談こう」
今度は、兄は断らなかった。
翌、私は兄と緒に相談窓へった。
借の状況を理するため、兄は通帳、カードの利用細、借用、与細を全部持ってきた。
担当者はつずつ確認し、誰にいくら借り、利はいくらで、毎いくら返しているのかを表にした。
百万円だとっていた借は、遅延分などを含めると百万円をし超えていた。
兄の顔から血の気が引いた。
「そんなに」
担当者が淡々と聞いた。
「の取りは?」
広告
「だいたい、万です」
「賃」
「万千」
「」
「あります」
「毎の遊興費」
兄は黙った。
私はをさなかった。
自分で言わなければがない。
「いで……万以」
「ギャンブルですね」
「はい」
そこで担当者は兄を責めなかった。
ただ数字を並べた。
賃。
費。
通信費。
。
費。
返済。
残った額。
「この状態で、今までどうやって回していましたか」
兄は私を見なかった。
「弟に」
さな声だった。
「援助してもらってました」
「いくらくらい」
「万から万」
「いつまで?」
兄は答えた。
「先まで」
その瞬、私は妙な覚になった。
初めて、私からていたが第者ので数字になった。
恩。
兄弟。
事故。
罪悪。
そういう言葉を全部すと、
《毎~万円の部資》
ただそれだけだった。
それが途切れたから、兄の計は崩れた。
つまり元々、成していなかったのだ。
担当者は言った。
「弟さんからの援助を返済計画へ組み込むことはできません。今ゼロとして考えます」
兄が瞬、私を見た。
私は頷いた。
兄の借は、債務理も含めて検討することになった。
友からの借は別に相談し、自分で返済計画を作る。
も必性を見直す。
ギャンブルについても専の相談先を案内された。
帰り。
兄は駅のベンチへ座った。
「恥ずかしかった」
「何が」
「全部言うの」
「うん」
「おにもらってるって言うのが番」
私は何も言わなかった。
兄は続けた。
「俺、本当におに返すつもりだったもあったんだ」