"廃屋を買った兄妹と、床下に眠る父の秘密" 第11話
「そうだね」
空は弟の髪を撫でた。
そのものに善悪はない。
誰が何のために使うか。
それだけだった。
警察の現確認が終わると、のハッチは全な鍵へ交換された。
埋める案もあった。
だが空は残すことにした。
ただしもうを閉じ込める所ではない。
防災用のや料を置く倉庫へ変える。
「お姉ちゃん、夜に叩かない?」
「叩かないよ」
「じゃあ僕、缶詰置く」
「何の?」
「みかん」
陽斗が真剣に言うので、空は笑った。
両親がんでから初めて、ので自然に笑えた気がした。
事件の捜査がむ、父の借についてもわぬ事実が分かった。
父が副業の運送事業のために借りたとわれていたの部は、実際には健の事業へ流れていた。健は父へ「な名義だけ」と頼み、返済すると約束していた。
父は弟を助けた。
度。
度。
それが続き、最には自分の信用まで使った。
空は昔、その父を腹たしくっていた。
「どうして断れないの」
何度も母へ聞いた。
母は、
「お父さんも分かってるのよ」
とだけ答えた。
事件、健の資産との流れが調べられ、父名義の借入に健が返済義務を負う部分も理された。空たちは相続放棄しているため、らない借を背負う必もない。
最初の頃、話で、
《娘が払うのが筋》
と言ってきた業者のには、法根拠のない請求もあった。
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倉田が件ずつ通をした。
話は止まった。
空はようやく気づいた。
両親がんだ直、自分はしむ暇もなく、
「払え」
「ていけ」
「署名しろ」
と言われ続けた。
そのため、全部自分が何とかしなければならないとい込んでいた。
でも本当は違った。
分からなければ聞けばいい。
払うべきでないものは払わなくていい。
助けを求めていい。
それを覚えたことが、事件を解くこととは別のできかった。
空はの勤務へ戻った。
以よりしだけ勤務を減らし、通信制の専学で経理を学び始めた。
父のに並んだ数字を理解できなかったことが、悔しかったからだ。
誰かが「これが正しい」と言った数字を、そのまま信じないためでもある。
瀬は退院、浜ロジスティクスへ戻らなかった。
会社は正事件を受けて経営陣がきく入れ替わり、部調査委員会が設置された。瀬には復職の話もあったが、本は断った。
「もう分会社に使ったからな」
そう言って笑った。
代わりに、企業の内部監査を伝う仕事を始めた。
数か。
空のへ通のが届いた。
《空さんへ》
《あので、私は何度も諦めました。回ずつを叩いたのは、助けを求めるためでもありましたが、自分がまだきていると確認するためでもありました》
《最初の夜、から回返ってきた、正直、だといました》
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空はそこまで読み、陽斗を呼んだ。
「覚えてる? この、夜に音してたでしょう」
「うん。僕寝てたけど」
「お姉ちゃんが返事したんだよ」
陽斗は驚いた。
「怖くなかった?」
「ものすごく怖かった」
「でも叩いたの?」
「うん」
陽斗はし考えた。
「じゃあ、怖くてもできるんだね」
空はを閉じた。
父と同じだった。
怖くないからやったのではない。
怖かったけれど、見過ごせなかった。
それでいい。
翌の。
潮見のはしずつ変わっていた。
根の穴は元のがく直してくれた。
千代からもらった古い卓を磨き直し、陽斗が青いペンキで子を塗ったため、脚だけ妙に鮮やかになった。
壁の染みは残っている。
もまだし軋む。
それでも空は、このが好きになっていた。
縁側へ座るとの音が聞こえる。
陽斗は学から帰ると、ランドセルを放りして防波堤へる。
「先に宿題!」
空が鳴る。
「帰ってから!」
「今やりなさい!」
そんな普通のやり取りができることが嬉しかった。
居の番よく見える所には、父と母の写真を置いた。
その横に、割れたままの父の腕計。
修理しようとえばできた。
でも空は、そのままにしている。
止まったまで直す必はないとったからだ。
ある、陽斗が学の作文を持って帰ってきた。
題は、
《ぼくの》
空は夕飯を作りながら読んだ。
《ぼくのは古いです。がたくさんふるとバケツをおきます。